研究実績の概要 |
27年度は前年度までの成果をもとに、技術的行為の哲学的、倫理学的な議論のとりまとめを行った。26年度には、技術者からの聞き取りをもとに原子力の初期の開発を題材として、技術者倫理に関わる問題の所在と、現在の技術者にとって踏まえれるべき課題の摘出を行ったが、本年度にはとくにそれらを責任に関する倫理学的問題と関係づけて論じることで、全体の統合を図った。これは25年度に行った、複雑な技術システムの中でいかなる責任を負うかという課題をより広い文脈から再検討したものである。 2015年7月に行われた、International Conference of the Society for Philosophy and Technologyにおいてはこの問題を集団志向性という視点から報告したが、2016年1月のInternational Innovation Workshop on Tsunami, Snow Avalanche and Flash Flood Energy Dissipationにおいては、責任を技術システムにおける責任とより広い世代間の責任の問題に分け、後者の視点から見たリスクの意思決定という問題に踏み込んで議論することとなった。また、同年2月の2nd Dutch - Japanese Workshop in Philosophy of Technologyにおいては、Responsible stewardshipの概念を批判的に検討する中で、人間に対する責任とともに自然に対する責任について論じた。 以上のように、本研究においては、聞き取りをもとにすることで、技術をめぐる哲学的・倫理学的な議論により事象に基づいた具体的な内実を与え、かつ日本の事例に則した成果を出すことができた。
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