福島第一原子力発電所の事故以来,改めて世界における原子力“平和利用”の展開に関心が寄せられているなか進められた本研究では,原子力“平和利用”を冷戦マターとして位置づけ,東西両陣営間の競争=科学力の誇示,人々の潜在的な不安となっていた放射線問題を鎮静化させる対応,それらを通じた同盟強化といった政治史的事象と関連づけ,“平和利用”の展開について,公正な事実探求のうえに再解釈を試みた.計6回の現地資料調査によって収集された文書記録類などを基礎に,科学者による原子力国際広報活動,放射線影響研究の複雑な展開など,新たな史実の解明に成功し,“東側”における原子力“平和利用”に関する知見の豊富化に貢献した.
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