工業技術博物館に収蔵されている工作機械の製作用図面から、3D-CADによる3Dモデル作成し、その可視化された構造から工作機械の発展過程・外観・内部構造等の調査を行い、その結果を本博物館の展示解説資料の一部に提供することを目的とした研究を進めた。これまでに作成したフライス盤4機種、大型強力旋盤1機種の合計5機種の3Dモデルを作成しており、機械技術史研究の資料として供し活用している。本年度は、継続して3Dモデルを作成し、また、該当工作機械を製造した東京瓦斯電氣工業の調査を実施した。 1. 3Dモデル作成 平成27年度、本研究では、新たに東京瓦斯電氣工業製タイヤボーリングマシンの3Dモデル制作した。当該工作機械のオリジナル製作用図面は、1932(昭和7)年にA1~A4サイズ相当の和紙に手書き(墨書き)で描かれた917枚、総部品点数は、884点である。当該工作機械を製造用図面から3Dモデルを作成して調査することにより、昭和初期に設計・製造された工作機械に採用された秀逸な内部構造を含めた特徴等を一次資料(実物)以上に効果的に解説できた。 2. 東京瓦斯電氣工業の調査 得られた3Dモデルを提示資料として、東京瓦斯電氣工業の造機部門を引き継いだ日立精機のOBの複数の方に聞き取り調査を実施した。制作した3Dモデル・収蔵している製作用図面・文献資料を提示して調査した結果、1940-1950年代に各部署が分社化した東京瓦斯電氣工業は、60年以上経た現在においては、当時を鮮明に記憶している同社幹部社員から直接の口述を得ることは困難であった。しかし、調査の際に、当時の文献資料の収集が行えており、今後、これらの工作機械が、現代の機械技術発展に貢献してきた経緯を調査・検討する。
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