研究課題/領域番号 |
25350390
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
黒木 俊秀 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (60215093)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DSM / ディメンジョン / カテゴリー / 計量心理学 / 精神疾患 / 有用性 / 妥当性 / アメリカ精神医学会 |
研究実績の概要 |
本研究は、1980年に米国精神医学会が発表した精神障害診断分類体系DSMによる精神医学の「革命」が、その後、30年案にグローバル規模で医学、生命科学、医療等に与えた影響の実態と歴史的経緯を明らかにすることにより、「新たな科学パラダイムは、各国固有の伝統的なパラダイムの素地の上に受容され、浸透してゆく」という仮説を論証する。それにより、今日、米国の学界に席巻されている我が国および諸外国の生命科学や医療の在り方を批判的に検証し、適切な科学情報リテラシーの啓発に寄与することを目的としている。 初年度の研究として、DSM-III開発の背景にあった計量心理学の発展が精神科診断学に与えた影響について文献的調査と分析を行い、診断の信頼性(一致率)の向上を優先すべく操作的診断基準の開発がなされたことを明らかにした。 2年目の研究では、我が国におけるDSM-III以降のグローバル・スタンダードたる国際的診断基準の普及が精神医学の教育、研究、および臨床に与えた影響について、文献調査およびインタビュー調査を行い、第二次大戦後も戦前のドイツ精神医学を堅持した我が国の精神医学教育の特殊性を明らかにし、その結果、1990年代前半までDSMも旧来のドイツ精神医学のフレームの範囲内で受容された事実を示した。さらに、2013年発表のDSM-5において、精神科診断の妥当性と有用性をめぐる論争が生じたことから、その意義と「疾患分類」をめぐる心理的本質主義の在り方を論じた。この間、DSM-5の邦訳作業に関わるとともに、同改訂版に関する解説書および論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行に極めて優秀な研究協力者による支援により研究は順調に進展し、および精神科診断学セミナー受講により、専門家のレビューを受けたところ、本研究の趣旨が概ね適切であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、研究成果のまとめとして、一連の研究成果報告を網羅したモノグラフの出版を計画しており、現在、出版社の協力を得て、原稿をとりまとめている段階である。また、国際誌に共著論文を投稿する準備も進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究計画は予定通り実施し、ほぼ計画通りの成果に達した段階で、旅費および人件費・謝金等の支出が少なかったため、なお次年度使用額を生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は、研究成果を報告するために精神医学専門書の出版社よりモノグラフの出版を予定しているが、出版にかかる諸費用に翌年度の交付予定額(200,000円)では達しないため、次年度使用額も併せて支出することを計画している。
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