研究課題
本研究は、1980年に米国精神医学会が発表した精神障害診断分類体系DSMによる精神医学の「革命」が、その後、30年間にグローバル規模で医学、生命科学、医療等に与えた影響の実態と歴史的経緯を明らかにすることを目的としている。初年度の研究として、DSM-III開発の背景にあった計量心理学の発展が精神科診断学に与えた影響について文献的調査と分析を行い、診断の信頼性(一致率)の向上を優先すべく操作的診断基準の開発がなされたことを明らかにした。2年目の研究では、我が国におけるDSM-III以降のグローバル・スタンダードたる国際的診断基準の普及が精神医学の教育、研究、および臨床に与えた影響について文献調査およびインビューッ調査を行い、第二大戦後も生前のドイツ精神医学を堅持した我が国の精神医学教育の特殊性を明らかにし、その結果、1990年代前半までDSMも旧来のドイツ精神医学のフレームの範囲内で受容された事実を示した。さらに、2013年発表のDSM-5において、精神科診断の妥当性と有用性をめぐる論争を生じたことから、その意義と「疾病分類」をめぐる心理的本質主義のあり方を論じた。この間、DSM-5の邦訳作業に関わるとともに、同改訂版に関する多数の解説書、および論考を発表した。最終年度の研究では、DSMが、今日の巨大化した生物学的精神医学と同様、日常臨床における診断の感覚との解離から精神医学にシニシズムをもたらした経緯と背景を考察した。
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Psychiatry and Clinical Neurosciences
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