平成27年度は、北海道東部(太平洋側・オホーツク海側)の各遺跡で発見された焼失住居址を分析対象として、焼失住居址3基から出土した炭化材の樹種識別を実施した。また、各焼失住居址の発掘調査時における記録図面を閲覧、分析して、それらの出土状態から各炭化材を住居建築材(主に、垂木)として位置づけた。また、焼失住居址1基から出土した炭化材の一部については年代測定をおこなった。それらと併行して、前年度までの総合的検討を行った。 1.北見市常呂川河口遺跡第137号竪穴(トビニタイ文化の焼失住居址)から発見された炭化材12点の樹種識別を実施した。また、トビニタイ文化の焼失住居址である、標津町伊茶仁ふ化場第一遺跡H-11号竪穴住居跡の炭化材15点、中標津町当幌川遺跡H-16号竪穴住居跡の炭化材42点から試料採取し、樹種識別を実施した。オホーツク海側の常呂川河口遺跡第137号竪穴では、垂木と推測した炭化材がコナラ節主体であった一方、太平洋側の伊茶仁ふ化場第一遺跡H-11号竪穴住居跡、当幌川遺跡H-16号竪穴住居跡では、ヤナギ属を住居建築材に多用する傾向をとらえた。 2.常呂川河口遺跡第137竪穴に関して、その竪穴住居址で発見された炭化材から試料1点を採取し、年代測定した(結果:10世紀後半~11世紀前半)。その結果は、第137号竪穴の南東壁際に発見された土器の型式学的位置づけと符合した。 3.前年度までに実施した研究結果と本年度実施した分析結果とを対比して、焼失住居址から発見された炭化材の部材位置づけ(焼失住居址にみられる建築から廃絶に至る過程の理解、炭化材の出土位置の検討、建築学的検討の3点から実施)をおこなった後、部材毎に利用した樹種の選択性を検討した。その結果の1つとして、トビニタイ文化(もしくはその併行期)の竪穴住居の垂木に対して、コナラ節、ヤナギ属、モミ属が加工、活用される傾向を見出した。
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