研究実績の概要 |
重要な地域文化遺産である商家(紀の国屋 / 佐山家)の大蔵を後世に残すべく、その歴史的価値を詳らかにした総合研究として歴史学・建築史学・考古学・博物館学の各分野によって以下のとおり成果をあげることができた。歴史学の分野では、蔵内に残された膨大な文書(近世14点、明治時代2,041点、大正時代1,373点)から佐山家が紀州箕島から江戸に出て佐原に移住するまでの経緯と背景を正確に捉えることが出来た。これは佐原佐山家初代が紀州と関八州を行来した紀州陶器商人であった事実をあきらかにしたもので、陶磁器流通史の観点からしても新たな史実を加えるものであった。建築史学では、敷地内の建物の変遷を明らかにすると同時に文政9年の上棟式関連資料などから江戸後期に遡る建築物である事実を明確にすることができた。また、大蔵使用の現状についても詳細な記録を残した。考古学班では、大蔵の基礎を構成する石材の分析や大蔵内に商品として残された陶磁器や漆器、土管など近代初期から現代に到る多数の資料に関して考古学的見地から分析し、資料の客観的な評価を行った。陶磁器流通に関しては資料の客観的な評価に加え関東・下総における江戸から明治期にかけての流通という観点からのアプローチを加えている。文化財学班では大蔵入り口付近の棚から発見された389点の劣化写真フィルムのカビを除去した上でフィルムスキャナーにより画像のデジタル化を行った上で一部はホームページで公開し、PDFをダウンロードできるようにした。博物館学班では特に将来での活用を意識して全国の重要伝統的建造物群保存地区における蔵の活用について調査を実施した。その他ホームページやフェイスブック等のSNSによって内容を確認する体制を調え、ロケスマなどで全国の重伝建情報や佐原の町並み情報を提供した。
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