本研究では、鉱山遺跡の文化的価値を高めるため人が立ち入ることができない鉱山坑道内(以下、坑道と記す)の定量データを測定できる遠隔操作型ロボットを開発し、全国各地の坑道を調査した。これにより坑道の定量データと採掘年代の相互関係を示す相関図を提案し、古文書等資料の乏しい坑道の採掘年代を推論する方法を示した。具体的にはCCDカメラ、2次元レーザ測域センサ、方位・傾斜角センサを搭載した遠隔操作型ロボットを開発して全国各地の坑道を調査した。また下向き坑道や、水平坑道、水没坑道等種々の坑道の状況に合わせたロボットを新たに開発して調査を行ってきた。更に空間を3次元点群データ(XYZ座標値)として測定可能な3次元レーザスキャナを用いて坑道や坑道が散在する斜面の3次元点群データを含めた定量データを測定する新たな手法も提案した。得られた定量データから露頭掘跡の採掘体積算出や地中内での坑道間の関係も定量的に比較することが可能となった。また3Dプリンタによって模型として坑道内や坑口周辺を再現することも可能となった。その結果大まかではあるが時代毎の採掘方法の特徴を構築することができた。具体的には、採掘年代と坑道断面形状および採掘傾斜角に相関関係があることが分かった。特に採掘傾斜角は17世紀後半にはほぼ水平に近くなることが示唆された。また斜面に密集している坑道では坑道間の高低差が約5m以上あることがわかった。 埋蔵文化財としての鉱山跡の価値を再認識してもらうために、全国各地で成果報告会を行った。また子供たちにものづくりの面白さを体験してもらうために、探査ロボットを模した工作キッドを開発した。これを用いて兵庫県猪名川町教育委員会や出雲科学館、湯之奥金山博物館等と協賛して工作教室を実施した。また東京エレクトロン(株)が主催する東北震災復興事業に協賛して宮城県石巻市牡鹿中学校においてものづくり教室を実施した。
|