研究課題/領域番号 |
25350401
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
安藤 美奈 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (70532498)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ミュージアムマーケティング / アート・マネジメント / 文化施設 / 博物館・美術館 / 消費者行動 / 芸術消費 / 博物館経営 / 来館者調査 |
研究実績の概要 |
今年度は、初年度の調査結果から、規模の大きい全国的に有名な博物館・美術館と並んで、訪問の「印象度」の評価が高かった愛媛県美術館を取り上げ、その起因となるものを明らかにすることを試みた。施設側の協力のもと、美術館の「友の会」に注目し、美術館と利用者の繋がりの発端となる事実や関係性が深まる過程を明らかにする情報を収集するべく、友の会会員と非会員合計17名にデプス・インタビュー調査を実施した。さらにこの聞き取り調査の結果の汎用性を検証するため、東京圏の博物館・美術館利用者10名に対してグループ・インタビュー調査を実施した。愛媛県美術館の事例からは、美術館が提供するメンバーシップ制度中心とした利用者への継続的かつニーズに対応した支援活動が、利用者と美術館との関係性を強めていくというモデルが提示された。一方で検証調査では、愛媛県美術館で見出されたメンバーシップ制度の有効性を、利用者側の選択肢が豊富な首都圏では直接的に転用することは難しいことが理解された。このように地方都市においては、メンバーシップ制度の導入または既存の制度の活性化を発端として、利用者の施設に対する愛着心を育んでいくことにより、利用者と施設が相互に支え合う関係の構築を期待できると考えられる。 また、今年度の研究成果は、初年度および平成23年度挑戦的萌芽研究「訪日外国人旅行者の日本国内文化施設における芸術消費に関する調査研究」の研究成果とあわせて、日本アートマネジメント学会第16回全国大会での口頭発表、日本ミュージアム・マネージメント学会研究紀要への投稿論文として発表、公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画された美術館友の会会員へのインタビュー調査については、愛媛県美術館の多大な協力により実施可能となった。さらにこの調査結果の汎用性の検証としてのグループ・インタビュー調査も実施することができ、有意義な考察を加えることができた。 昨年度と今年度の研究成果を日本アート・マネジメント学会において口頭発表を行い、活発な質疑応答もできた。さらに先行研究での成果とあわせた論考が、日本ミュージアム学会研究紀要へ採用された。 以上のように、平成26年度に達成すべき成果を得、次年度に向けて研究は順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度、26年度の調査研究結果に基づき、その検証となる調査を実施し、施設が提供するサービスに関するコンセプトの作成に向けて取りまとめを行う予定である。 調査設計については、外国人を含めた来館者の属性、また都市部と地方といった昨年度の調査によって浮き彫りになった立地による相違について、検討を加えながら行い、研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査実施や打合せに関わる旅費交通費の変更や、実施した調査仕様の細かな変更などにより、平成26年度に繰り越される研究費が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度から繰り越された研究費を含め、平成27年度の研究費については、主に国内外来館者に関する調査及び文化施設への訪問調査、調査実施に関連する諸費用に使用する。
|