本年度までの研究から、来館者が抱く文化施設の満足・不満足の実態、来館者が抱く期待・満足のギャップが再訪問意向に及ぼす影響、来館者の個人要因が及ぼす影響、文化施設の立地要因が及ぼす影響が明らかにされた。最終年度である本年度は、こうしたこれまでの研究成果を総合的な考察を行った。 考察は次の3つの要点にまとめられる。まず訪日旅行者を含め外国人については、国内文化施設に認知度が低いことから、ホームページやパンフレット、館内表示などの多言語対応を試みる、また外国語によるガイドなどの外国人に向けたサービスを充実させることにより来館の満足度を引き出し、SNSなどを通じて来館者側からも来館の感想や評価の情報発信を促し、さらに認知度を向上させることが必要である。次に、国内の来館者について、美術館・博物館の期待及び満足度には、芸術全般に対する関心の度合といった個人要因や、施設の立地要因が影響していることがわかった。この施設の立地は、都市部、郊外および地方、観光地に大別することができる。施設の立地要因について、特に東京は博物館・美術館の数、質において他の地域とは大きく異なり、地方にある施設と東京とでは異なるマーケティングを行う必要がある。 以上の考察から、本年度に国内の施設利用者を対象に博物館・美術館の立地別のコンセプト評価をオンライン調査で実施、施設の立地を軸として、日常で、旅行などで、どのようなサービスを提供する施設を利用したいか、来館者の利用意向について検証することができた。 また本年度には、昨年度の研究成果に基づき、地方ミュージアムにおけるメンバーシップ制度の有効性について、愛媛県美術館を事例とした利用者調査の結果を研究ノートとしてまとめ、日本アートマネジメント学会の研究誌である「アートマネジメント研究」へ投稿、掲載発表した。
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