人口減少、少子高齢化の進行した中心市街地という空間において博物館の機能が果たす役割について研究活動を行った。 平成27年度は特に中心市街地に住まう高齢者を中心とした回想・対話を重視しながら、若年層である子供や主婦層の活動が実施出来る空間を構築し、そこで得られた効果について測定した。 第2次大戦後70年という事が大きく、調査研究実施地もかつて空襲によって大きな被害を被ったという歴史的事実があり、この事をテーマとし、市民から収集した資料を活用した小規模な企画展示を行った。その一方で子供がワークショップ等の活動を実施し、そこに高齢者とのコミュニケーションが実施可能な空間を整備する事で、両者の交流を行える日常的な「居場所」を構築する事が可能となった。昨年度・一昨年度において、こうした状況において高齢者のQOL(生活の質)が高くなる傾向がある点は理解している。 今年度はこのような環境を整備した上で、「空襲」というテーマでの高齢者のグループ対談を実施した。ところが空襲・戦争を伝える事の困難さが話題になると、QOLは必ずしも高くはならないという事が確認された。 一方、これとは別に空間を子育て世代の主婦層が活用出来る場としても整備した。特に楽器演奏のような音の出る活動は一般の住宅環境では難しく、また個人が楽器を持ち寄ってその場で出会った人とセッションするといった状況は公的な空間でも構築しにくい。そして高齢者が日常的に来場している環境が整っているので、母親が楽器演奏をしている間、子供を預かっておける等のコミュニケーションが可能となった。 平成25年度から27年度までの3ヶ年間の研究活動を実施して、このような展示+活動空間という構成が中心市街地住民の日常的な活動にも有効である事が理解出来た。
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