本研究は、1.展示の成り立ちと受け止め方を表わす方法の確立、2.展示の企画意図を伝えるための情報基準(ICE)の設定、という2段階の調査から、博物館の展示を教育的視点から評価することを目的とする。28年度は、過去3年間の総まとめにあたるので、調査を継続しながら、研究成果の発表も一部行なった。以上より、来館者による展示理解をすすめるには、展示を理解しようとする動機を高める、展示をわかりやすくして理解を助けるという2つの段階での取り組みが効果的であることがわかった。 (1)展示の成り立ち把握:過去の調査や展示類型化をもとに、「展示概念の階層構造の把握とそれぞれがどれほどの情報量を持つのかをカウントする」という新たな記録方式を決定した。 (2)来館者による展示評価:昨年度からの継続で、地球博物館の1つの展示コーナーに限って、観覧行動を集中的に調査した。(4)の新展示の前後に行動に変化が認められるのか、検討を行った。 (3)他館の展示比較:28年度は、北海道、関東、中部、近畿、九州にある20以上の博物館・水族館・動物館で、(1)の方式により展示の成り立ちを調査した。展示の階層構造を把握した後に、各階層で使用されているパネル数、グラフィックス類を記録し、それぞれの文字数や内容についても詳しい調査を行った。詳しい結果については、現在解析中であるが、博物館によって、もっとも主張したいことを表わす階層や主張に用いる文字情報の分量が様々であることがわかった。 (4)来館者評価を反映した新しい展示作成:来館者の注目点や他館調査からのヒントを反映させて、新展示を完成させた。
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