| 研究課題/領域番号 |
25350413
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| 研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
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研究代表者 |
八木 剛 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員 (40311485)
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| 研究分担者 |
赤澤 宏樹 兵庫県立大学, 付置研究所, 准教授 (30301807)
布施 静香 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30344386) [辞退]
小舘 誓治 兵庫県立大学, 付置研究所, 助教 (60254455)
古谷 裕 兵庫県立大学, 付置研究所, 准教授 (90173541)
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| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | 東日本大震災 / 社会教育 / 子ども / 博物館 |
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| 研究実績の概要 |
児童の身近な自然観察の発露である「しぜんかわらばん」をツールとした支援プログラムは、希望のあった１施設で、学校への呼びかけによって実施され、135点の作品応募があり、これらの作品の一部は、「東北しぜんかわらばん展」として、兵庫県立人と自然の博物館で展示した。
このツールについて、関係者へのヒアリングによって、費用対効果を分析した。前年に実施した２県の施設からは希望がなく、このツールを用いた双方向的な支援活動が、持続困難であることが示唆された。困難な理由は、募集や展示にかかる労力の大きさであると推察された。一方、実施した１施設が継続の意思決定をした理由は、遠隔地からの支援が目に見えること、「賞」を付与することによる児童のモチベーション向上への期待、これらも含め学社融合メニューの一環として事業効果が認められたこと、であると推察された。
新たなツールとして、放射線の影響の残る地域に対して、学習や遊びで使える自然素材（植物の果実等）の提供を試み、送り手の声、受け手の声を把握、意義を分析した。全国各地からのギフトは学校現場に新鮮な教材を提供し、丁寧に綴られた児童の感想は、送り手に対しても、励みになっていた。長期的な支援継続の可能性があるが、放射線の影響という局所的な事情を背景としており、他地域へ展開することは難しいかもしれない。
以上は、ツールや実物資料を用いた支援方法であるが、さらに、任意団体「こどもひかりプロジェクト」が取り組んでいる、人を介在させた支援プログラムの背景と特性を把握した。この団体では、大学生を「ユーススタッフ」として募集育成し、大学生を介して、被災地の児童らへ支援を行っている。この方式の意義について、研究会を開催して意見交換した結果、中長期的に有効なシステムとなる可能性があることが判明した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で想定した、支援ツールとしての「しぜんかわらばん」の課題と効果が明らかになり、今後の展望が開けた。当初、兵庫県立人と自然の博物館で実施した形態をそのまま適用したが、博物館での展示を目的化している感が強く、参加施設の労力的負担が大きかった。また、提供者側は「自然観察」の意識が強かったが、実際の応募作品はその範疇にとどまらず、多様なミュージアムが連携して対応することが効果的であると思われた。「賞」の付与は、ミュージアムが学校と連携する際に効果的な手段の一つであると思われ、選考にかかる労力をより引き下げれば、中長期的に持続できる可能性があると考えられる。
こどもひかりプロジェクトの取り組んでいるユーススタッフの育成は、博物館の教育機能を活かしたもので、長期継続型支援システムの設計につながる可能性がある。博物館美術館が共同して育成することで、館の専門性にとらわれない博物館の本質的な機能を、ユーススタッフは修得する。このような大学生の生き生きとした活動に、子どもたちは自らの将来の姿を投影し、学ぶ意欲を高める。また、共同での育成は、教え子を共有することとなり、ミュージアム連携が強化され、参画した館の職員にとっても資質向上となる。扱う資料の特性ではなく博物館の教育機能に基づく連携は、これまでにない博物館ネットワークの形成にもつながるものと期待される。
公募型作品展やボランティア養成は、これまでも多くの館で実施されているが、多くの場合単館的な取組みであった。ここまでの本研究によって、これらの事業を共同化することや、子どもたちが大人になるまでの時間スパンで取り組むことによって、長期的な被災者支援につながる可能性が示唆された。このアプローチは、被災地のみならず、全国的な課題となっている地域再生、地方創生に対しても、有効であると考えられる。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、ツールとしての「しぜんかわらばん」を、博物館美術館は子どもたちの表現をどのように支援することができるのかという、より一般的な命題に昇華させ、システムを再構築する。まず対象としての「自然」を撤廃し、子どもたちの表現手法の一つとして絵画作品を位置づけ、博物館での展示を必ずしも目的化せず、作品の規格を自由化する。これまでは、募集情報の配布と応募のみであったが、現地での観察やワークショップと連動させた作品創作を試行する。また、「賞」のシステムを再検討し、選考過程と賞のカテゴリを整理し、賞の付与に伴う民間資金の導入の可能性を検討する。さまざまな館種の博物館美術館の参画が効果的であることから、こどもひかりプロジェクトの活動との連動も検討する。
こどもひかりプロジェクトの事業内容や団体運営面の特性を詳しく把握し、システムとしての持続可能性を評価する。このプロジェクトには、多様な地域、多様な館種の博物館職員が関与しているが、既存の業界団体とは、とくに関係がない。震災復興支援という当初の趣旨と代表者の人柄が強い求心力となり、制度の外側に新たなプラットフォームを設けることで、活発な活動が行われている。中長期的には今ある求心力が低下することも考えられるが、その場合、財源や人材をどのように調達し、活動を継続していくのかが、課題であると察せられる。たとえば、公立博物館では、自治体の域外へ出て活動することに組織内で理解を得ることが困難であることも多い。既存の業界団体との機能の比較も行いながら、継続的な活動の可能性について分析する。
博物館こそができる長期継続型支援システムとしては、設置者の事情に左右される単館事業ではなく、多様な館が連携できるツールやプラットフォームの開発が重要であると考えられる。年度後半には研究会を開催し、これらの要件を明らかにしていきたい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
現地訪問先との日程調整により、次年度の訪問が妥当であると結論づけたため。
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| 次年度使用額の使用計画 |
次年度の現地訪問により、使用する。
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