本研究は,空中写真と衛星画像という2種類のリモートセンシングデータから数値標高モデルを生成・比較することで,南極・宗谷海岸における過去45年間の氷床の表面高度変化を検出することを目的として実施した. 初年度および前年度を通じて,空中写真の収集,カタログ化,デジタル化,ステレオペア画像モデルDEM化手順の確立と精度検証を実施してきたが,最終年度では,同一地域の経年変化を検出できるような多時期ステレオペア画像を選定し,1962年と1991年と2007年の画像が,宗谷海岸の氷床縁の変動を追跡するのに有用であることを見いだした.その中から,ラングホブデ地域において氷床の表面高度変化と末端の前進を解析した結果,ラングホブデ氷河が,末端位置を1975年から2007年にかけて大きく後退させた一方,表面高度は定常状態もしくはわずかに増加傾向であったことがあきらかとなった. 1970年代以前に撮影された空中写真については,写真自体の存在は確認できるものの,良好なステレオペア画像を得られず,DEM化が困難なため,平面的な変動については追跡できるが,表面高度や氷体のボリュームの変化については,検出することができなかった.これは,正確な地上基準点が得難いことや,画像の歪みなどに起因するものであるが,近年,Structure from Motion技術など,ステレオペア写真以外の画像解析技術の発展が著しいことから,それらの応用によって解決できる可能性がある.本研究によって,従来の写真測量技術の限界,人工衛星画像解析との融合による解析プロトコルの確立,そして,新たな画像解析技術の応用の可能性が示された.
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