本研究は,2011年の東北地方太平洋沖地震津波により激しく侵食された海浜地形を対象に,衛星画像および航空の解析,DEMおよびGPS測量データを用いたGIS解析により,地形の修復過程を明らかにするものである.衛星画像,航空写真から,津波による地形変化の激しかった仙台湾岸の蒲生海岸や野蒜海岸,気仙沼市の小泉海岸,八戸市大須賀海岸,いわき市鮫川下流海岸を調査地域に選定,津波前および津波直後の数値標高モデル(DEM)を用いて津波時の侵食量を求め,その後,高精度GPSを用いたキネマッティク測量を実施して,それらのデータをGISを援用して複数年次の標高分布図から津波後の地形変化過程を明らかにした. その結果,津波時にラグーン前面の砂州がほぼ完全に侵食された海岸部(野蒜海岸,蒲生海岸,小泉海岸)では,砂州地形の再形成は,津波後,数ヶ月後にバリア島状の地形が発達し,これらがアンカーとして連続した砂州が発達していくこと,形態的には砂州が再形成されてるものの,侵食された土砂量の5~6割程度の土砂しか堆積していないことが明らかになった.また,時系列の検討により,対象地域の沿岸漂砂上流側の地形が大きく侵食されていることから,海浜地形の再形成には,沿岸漂砂上流側の土砂供給が可能かどうかが大きいことが指摘された.平成27年度は,近年,震災復興工事によりGPS測量ができない海岸が増えたため,SfMソフト(Agisoft社PhotoScan Pro)により作成したオルソ画像とDSMを用いて海浜地形の修復過程を明らかにし,これらの手法においても,GPS測量と同様の検討ができることを示した.
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