研究課題/領域番号 |
25350420
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
八木 浩司 山形大学, 教育文化学部, 教授 (40292403)
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研究分担者 |
佐藤 剛 帝京平成大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00468406)
檜垣 大助 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10302019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重力性山体変形 / 山体釣り鐘度 / 斜面限界歪み度 / 限界斜面傾斜 / ヒマラヤ / 高起伏山地 |
研究実績の概要 |
2014年度の研究は以下の三点である. 一つ目は,高起伏山岳地域における突発的山体崩壊が生じやすい山体形を検討するため,重力性山体変形の進みやすいと思われる山体の釣り鐘形状度を算出した.山体の釣り鐘形状度とは,山体断面形のうち谷底と稜線頂部とを結んだ線よりも上部にある荷重が断面形全体に占める割合を算出したものである.その際,詳細なデジタル地形データが利用できる日本の北アルプス北部地域を選び作業を進めた.その結果,高い釣り鐘形状度を示す山体では,重力性山体変形の進行を示唆する逆向き小崖地形の発達も顕著であることを明らかにした. 二つ目は,2014年8月に発生したネパール・スンコシ川流域で発生した大規模山体崩壊を例に,その発生場の地形・地質的特性を現地調査と空中写真判読による地形特性から,凸型尾根型地形が発災に重要な因子となることを明らかにした.さらに,時系列的な画像解析による発生場周辺での軽微な地形変形の把握から,そのような現象の時間スケールが少なくとも20年以上の予兆的崩壊現象を伴っていることも明らかにした. 三つめは,ネパール低ヒマラヤ帯を対象に作成した地すべり分布図を利用し,一次すべりの発生した斜面の地質帯ごとの限界斜面傾斜を明らかにした. 以上の結果は,2015年日本地理学会春季大会,2015年4月開催の第7回ネパール地質学会議で発表し,さらに2015年日本地球惑星科学連合大会で発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初主たる研究対象地域をパキスタン・カラコルム地域として進めてきた.しかし,現地の政情悪化から調査対象をネパールヒマラヤと日本の北アルプスなどの高起伏地域に置き換えて進めた.しかし,データ的には日本やネパールヒマラヤにおける方が得やすいことから,釣り鐘形状度の比較から重力性山体変形の度合いを推定することが可能になった.また,ネパールヒマラヤにおける限界斜面傾斜を計測したことで,二つの示標を用いた高起伏山地斜面の崩壊サスセプティビリティを推定することが可能になったと考える. 明らかにした成果は,内外の学会に於いて発表できたことから,おおむね順調に研究を進められていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
高起伏山地の重力性変形の進行度を計測することで,その進行の時間スケールを明らかにすることが次の課題であることが認識されるようになった.また,山体の変形が重力以外に構造応力から派生するものがあることが示唆されてきた.今後の研究では,突発性斜面災害に至る時間スケールや構造性応力の関与もを勘案しながら危険度判定まで踏み込んでいくことを検討している.また,当初の対象地域であるパキスタン・カラコルム山地に対しても対象面積を縮小しながらも,作業を進めていきたい. 2015年4月25日発災のネパール地震にともなう斜面災害についても発生場や震源断層との関連から調査を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は物品費の使用額が膨らむと予想されることから,2015年度予算に繰り越して使用できるようにした.
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次年度使用額の使用計画 |
画像地形解析ソフトを更に一セット購入して,地形解析を同時進行で行えるようにする.
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