日本の河成扇状地は沖積扇状地であると世界的にほぼ再確認されたので,その再確認をより確実にするため,前年度と同様に,より多くの地域において河成扇状地の集水域面積と扇面面積の関係式を得ることとした。このため,タイの5万分の1地形図を購入し,面積2km2以上の扇状地の収集をした。 河成扇状地と巨大扇状地の区分については,次の見解が得られた。Kesel(1985)が示したコスタリカのヘネラルバレーの集水域面積と扇面面積との関係式(Af=0.921Ad1.01とAf=0.88Ad0.98)の延長線上に,コシ川巨大扇状地の集水域面積と扇面面積の点があったため,巨大扇状地が沖積扇状地の一員である可能性が指摘された。しかし,Kesel(1985)が示した関係式は,計測ミスに起因するもので正しくないことが明らかになった(斉藤,2011)。また,ヘネラルバレーの沖積扇状地も含めたコスタリカの18沖積扇状地の関係式Af=0.59Ad0.71は,湿潤変動帯にある日本のAf=0.92Ad0.60,台湾のAf=1.00Ad0.64,フィリピンのAf=0.65Ad0.72,ニュージーランドのAf=0.63Ad0.70の関係式と同様であることが明らかになった(斉藤,2014)。これらの地域の2km2以上の扇状地の多くは河成扇状地であり,その関係式の延長線上よりも,巨大扇状地の値は,かなり上にある。これらのことから,関係式延長線が最も上に位置するフィリピンの関係式Af=0.65Ad0.72よりも上に位置する扇状地は,巨大扇状地とみなすことができそうである。 ただし,河成扇状地が多いと思われるサンワキンデスバレー(集水域が砂岩)の関係式Af=2.1Ad0.98の延長線より下に,コシ川巨大扇状地の値があるので,結論づけるには,サンワキンデスバレーの扇状地についての調査が必要となっている。
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