研究課題/領域番号 |
25350427
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松多 信尚 名古屋大学, 減災研究連携センター, 研究員 (40578697)
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研究分担者 |
鷺谷 威 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (50362299)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 変動地形学 / GPS観測 / 水準測量 / 糸静線 / 阿寺断層 / 根尾谷断層 |
研究概要 |
本年度は、測地データを取得のための整備が本研究の大きな目的であった。特に従来の観測点がある根尾谷断層や跡津川断層に対し、阿寺断層や糸静線牛伏寺断層付近は観測点が疎であった。そのため、現地調査によって適当な場所(主に小中学校およびそれらの廃校跡)を選定し、市町村及び学校と協議し、GPS観測点を設置し、観測を開始した(一部は天候などの影響で設置が出来ず、今年度にずれこんでいる)。これらは、今後定期的にデータを回収する予定である。 一方、長期の変位量速度を見積もるための調査は、跡津川断層および根尾谷断層で実施し、空中写真判読による変動地形のマッピングと、詳細DEMデータの精度検証などをおこなった。その結果、跡津川断層においては、数カ所で新たな長期変形速度を見積もれる可能性がある場所を見いだした、また根尾谷断層では、詳細なDEMデータの入手がなされ、高密度変位量分布を作成するための下地ができあがり、温見断層や根尾谷断層北端部での変位地形に関して、調査候補地点を選定した。 また、モンゴルに渡航し、現地のモンゴル科学アカデミー地理学研究所のD. Enkhtaivan 先生と共同で、グンジン断層とフスタイ断層に関して、衛星画像を用いた実体視判読と予察的な現地調査をおこなった。その結果、変動地形がブロードで変位量を見積もるのが通常の調査では難しいことや、変位速度を見積もるための調査が国立公園の保護区であるために難しいことなどが判明した。一方、縮尺が大きく高解像度の航空写真の入手の手配を行い、DEM作成によって、鉛直成分を誇張するなどして変位地形を抽出する方法の下地を作った。 また、台湾台東縦谷において、航空写真とPhotoscan Proを用いた写真マッチングによるDEM作成を行い、高密度変位量分布の作成を試みたが、航空写真では誤差が大きく、今後独自にデータを取得する方法を探ることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りに進短期変形速度に必要な、GPSの観測点はその数点を残して、ほぼ整備が完了した。設置できなかった点は、天候などでGPSの設置ができなったが、そのほかの点はGPSが設置できたので、大局には影響しないと考えている。また、根尾谷断層の補充整備の前に糸静線の整備を行った。その理由は、糸静線中部の地震活動が活発であったため、より早い段階での観測開始が必要と判断したためである。これらの点については、今後粛々と変位速度が見積もられるまで、観測を続けていくことが大事である。 一方、現地調査の方は、航空写真を用いた写真測量から、写真マッチングを用いたDEM作成に方針を若干変更した。そのため、必要な機材や調査開始に伴う準備が多少変化したが、やや遅れ気味なものの大局的には予定通りに進いる。 一方、海外での調査はモンゴルと台湾では、予定より大きな成果があがり、モンゴルでは衛星写真を使った活断層分布をもとに、空中写真の入手のめどが立った。 以上をそう総合的に踏まえて、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
全体は当初の予定通り進めていけばよい。26年度に関する具体的な予定は、所属が代わり、調査地点まで遠くなったことと、掘削機器などの購入が必要であり、若干の予定の変更が必要である。 短期変形速度に関しては、昨年度設置した地点の観測を粛々と実施するほか、天候によって設置できなかった地点の設置を速やかに行う。また根尾谷断層において観測点を補充する必要性について検討し、必要な場合は速やかに観測点を増やす。 長期変形速度については、予定通り跡津川断層および糸静線の調査を中心に現地調査を数回行い、小規模な掘削調査も実施する。また、本年度は根尾谷断層に関して、重点的な予備調査を開始する予定である。 昨年度予察的調査を行った、モンゴルおよび台湾のうち、本課題により高い可能性で貢献できる台湾の東海岸での調査を掘り下げて、簡易ヘリを用いた空撮調査などを実施し、面的な変位速度パターンを見積もる予定であり、モンゴルでは空中写真を使った詳細活断層マップを作成することが可能だと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度予定していたGPS観測機器の設置が、共同研究者の他経費によって購入された物品を使用したことと、設置が積雪のため26年度にずれ込んだ地点が生じたため、それに生じる旅費や経費がかからなかったため。 当初の使用目的通り26年度に融雪を待って設置する費用にあてることと、在籍場所が名古屋から岡山に移ったことで調査旅費の負担が大きくなるため、その調整にも用いる予定である。
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