研究課題
今年度は,昨年度に引き続き,国土地理院の基盤地図情報として整備・公開されている5mメッシュ間隔のすべてのDEMを用い,その不足地域を10mメッシュ間隔のDEMで補って,日本全国の過高感を強めた地形アナグリフ(ステレオペア画像)を作成した。これに,海底地形図の等深線から作成した海底地形のDEMを追加して,現在公開されている地形情報のうち,最も解像度の高い海陸を統合した日本全国の地形アナグリフを作成した。さらに,『詳細活断層デジタルマップ』の断層線のラインデータを地形アナグリフに重ね合わせたものも作成した。これらの詳細地形アナグリフを用いて変動地形学的な地形判読を行った。その結果,函館平野東縁や佐渡島の大佐渡山地南麓のほか,武蔵野台地など関東平野の段丘面上などに変位・変形を新たに認められた。いずれも,地域の地形形成や地殻変動を考える上で重要な断層帯と考えられる。昨年度,新たに認められた砺波平野西縁の断層帯については現地調査やボーリングデータの解析など,実証的な研究を行った。一方,撮影時期の古い空中写真からDEMを作成する方法について検討し,SfM-MVS技術を利用したソフトウエアを用いることで,変動地形学的な検討が可能な精度で過去に遡って変位地形を復元できることを明らかにした。全国の地形アナグリフは地図集としてまとめ,広島大学の学術情報リポジトリを通して公開するとともに,一部はwebサイトの地図と重ね合わせて表示できるように加工して公開した。また,全国学会の学術大会(日本地理学会および日本活断層学会)や国際会議(International Symposium on Earthquake, Tsunami and Nuclear RisksおよびHokudan 2015)で積極的に発表し,研究者との議論を深めた。
3: やや遅れている
研究実施計画のうち,1および2についてはほぼ順調に進んでいる。一方,3については試行は行っているものの十分な検討はできていない。
重要な成果を挙げつつある全国詳細ステレオ地形画像の判読を重点的に実施するとともに,判読成果を積極的に公表し,研究者間での議論を深める。「ステレオ判読による変位量測定法」については試行を重ね,その可能性を追求する。一方,その分析データとなる詳細な数値標高モデルの作成について技術的な検討を続ける。
10,000円以下の研究費が残ったに過ぎず,計画的な執行を行ったと考えている。次年度の研究費とあわせて合理的,有効な研究費の執行を行うため残金が生じた。
数値標高モデル作成の試行を行う研究機材の購入経費として使用を予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) 図書 (3件) 備考 (2件)
活断層研究
巻: 42 ページ: 印刷中
広島大学大学院文学研究科論集.特輯号
巻: 74 ページ: 103, 68
地学雑誌
巻: 123 ページ: 721-732
http://doi.org/10.5026/jgeography.123.721
http://home.hiroshima-u.ac.jp/~hgis/nagano/Nagano_North_eq.html
http://home.hiroshima-u.ac.jp/jsgs/5339tokyo_google_ana/index.html