研究課題/領域番号 |
25350429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池見 洋明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90380576)
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研究分担者 |
三谷 泰浩 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20301343)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地形プロセス / 高精度デジタル標高モデル / 地形変化 / 地理情報システム |
研究概要 |
1.「各種情報の調査・収集と高精度DEMの作成」本研究計画で利用する各種情報の調査・収集を行った。現在、入手した情報として、航空機レーザ測量データ(入手先:自治体)、時系列の空中写真(国土地理院)や大縮尺地形図(自治体)、砂防ダムの堆砂情報(自治体ほか)である。航空機レーザ測量データからは5mグリッドの高精度DEMを作成した。 2.「地形プロセス解析と調査サブ流域の選定」高精度DEMを用いて、対象地域を適切なサブ流域に分割し、地形プロセス解析を行い、その結果をもとに調査流域を選定した。地形プロセス解析では、まず申請者らが提案したプロセスモデル式を(池見ほか, 2012)、地形の勾配、曲率、集水面積の関係式に変形した。次に、高精度DEMから求まる各サブ流域の勾配・曲率、集水面積の散布図からフィッティングによる逆解析でモデルパラメータ(地形プロセス比、地形の起伏、侵食に対する抵抗)を求めた。このパラメータをもとにサブ流域をいくつかグループに分け、代表的な流域を調査流域として選定した。 3.「時系列地理空間情報による地形変化量の算定」時系列の空中写真や地形図からサブ流域の土砂移動に関する特徴を明らかにした。空中写真は1960年頃以降のもの使用し、表層崩壊など地形プロセスの履歴の抽出を行った。また写真測量ソフトを用いて旧DEMを作成して、高精度DEMとの差分などから地形変化量の見積を試みたが、植生の多いなどの問題から良好な結果は得られていないため、別の手法など、次年度も継続して検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要としたデータの収集および解析、調査地域の選定作業は計画通りに遂行できたが、概要欄の3の項目「地形変化量の算定」は完了できていない。これは山地の植生状況が主な原因であり、当初から想定していたものである。その解決には、やや精度は落ちるものの、旧版の森林基本図など別情報を用いることにより、当該項目は実行可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度に残された課題解決に加え、以下の内容を実施する。 4.「現地調査による表層水・渓流堆積物の計測」渓流堆積物の量や粒度と表層水の状況を把握するため、水文地質調査を行う。堆積物はGPSとレーザ計測計による幅や深さの面的な計測から3次元分布を見積もる。また試料は粒度分析を行い、粒度ごとの堆積物の量を算定する。渓流堆積物の分布は、表層水の水質や流量にも影響するため、河川水の流量、濁度、電気伝導度、pHの測定を行い、相対的な堆積物の量を見積もる。 5.「砂防ダムの堆砂量の計測」砂防ダムの堆砂物より土砂の粒度と量を把握する。砂防ダムの堆砂は、上流からの土砂供給を捉えていると考えられる。しかし、古いダムは、すでに満砂状態の場合が多く、時間的な供給量の情報は得られない場合が考えられる。そのため、比較的新しいダムに焦点を当て、堆砂量の計測と建設年からの経過時間で、年間の平均土砂供給量を求める。また、堆積物の試料を粒度分析に供し、流域の土砂管理に重要となる粒度ごとの年間の供給量を把握する。 6.「斜面における土層厚さ分布の面的な現地計測」調査流域の典型的な斜面を選定し、土層厚さの空間分布と地形との関係を定量的に求める。斜面の選定は傾斜や植生などからGISを用いて選定する。土層厚さ分布の計測は、適切な範囲で、斜面を数mのメッシュに区切り、簡易貫入試験機を用いて面的に行う。 7.「ベリリウム・炭素同位体による土層の生成速度の算定」土試料中に含まれるベリリウム同位体から土層の生成速度を求める。また鉛直方向に採取した土試料の炭素の濃度、安定同位体δ13C、放射性同位体の14Cを分析し、Wynn et al.(2006)を参考に、土層の鉛直方向の炭素同位体変化や濃度変化のプロファイルを求め、有機物の起源、埋没後の微生物による分解、侵食による削剥など、土層の生成がどのような環境で生じたのかを明らかにする。
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