研究課題/領域番号 |
25350430
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
青木 久 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30423742)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 津波石 / 津波 / 海岸段丘 / 海食崖 / 石灰岩 |
研究実績の概要 |
本年度は宮古島東平安名崎と下地島西海岸において海岸段丘上にみられる津波石を対象とし,津波石の重量(W)の推定と海食崖の高さ(H)に関する現地調査を主に実施した.段丘上の津波石は,宮古島では11個,下地島では1個,合計12個存在した.宮古島東平安名崎と下地島西海岸の海崖の高さは,それぞれ17.8 mと10.0 mであった。津波石の重量(W)を求めるためには,津波石の体積(V)と密度(ρ)を把握する必要がある.津波石の径の計測を行い,体積(V)を求めた.岩石の密度(ρ)は一般に,弾性波速度(v)と比例関係をもつことが知られている.そこで小型弾性波速度測定器(PS-1)を用いて弾性波速度(v)の計測を行った.弾性波速度(v)の平均値は,約2.2 km/sec であった. 本研究で対象とした津波石は全て琉球石灰岩であることから,琉球石灰岩の密度(ρ)や弾性波速度(v)のデータが掲載されている先行研究のデータを用いて,両者の関係式を作成した.この式に現地で得た津波石の弾性波速度(v=2.2 km/sec)を代入し,津波石の密度(ρ)を求めると,約1.4 g/cm3 という値が得られた。このρと津波石の体積(V)との積から津波石の重量(W)を求めた. その結果,宮古島東平安名崎における最も重い津波石は約700tもの巨礫であり,海食崖の高さ(H)と津波石の重量(W)との関係から,宮古島における過去最大の津波は,H=17.8 mの海食崖をもつ段丘上に約700 tの津波石を運搬した規模のものであった可能性が高い.下地島ではH=10.0 mの海食崖をもつ段丘上に約4000 tの津波石(帯大石)を運搬した規模の津波が過去に襲来したことが推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年間の補助事業期間延長が認められたこともあり,次年度の最終年度を残し,当初の予定としていた野外データをほぼ収集することができている。以上のことから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は石垣島・黒島における津波石の再調査と室内実験を行い,津波の規模・海崖の高さ・津波の重量の定量的関係を明らかにして,モデル化を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
データを補遺するための野外調査と室内実験の実施が必要となり,1年間の補助事業期間延長の申請が認められたため,未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
主に野外調査旅費として使用する.
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