研究課題/領域番号 |
25350437
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 眞理子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90323550)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CDS / 流動性 / 平時 / ストレス時 / 市場参加者 |
研究概要 |
金融危機の際には、平時の市場ではみられないような資産価格の均衡関係からの乖離が生じ、また、流動性の急速な低下が市場の混乱を引き起こした。本研究は、危機時に顕在化する流動性の価値(プレミアム)を決める要因を実証的に明らかにすること、また、そうした分析を踏まえて市場が流動性危機に陥る資産価格変動のメカニズムを理解することを目的としている。 平成25年度においては、CDS市場について、取引動機や態様、価格形成に対する認識などを調査する市場参加者へのアンケートを実施した。CDSは相対取引の市場であり、公開データも限られているが、これまで行われていなかったアンケート調査の実施やこれを踏まえた市場関係者との意見交換、インタビュー調査などによりCDS市場の現状と流動性に関する諸課題についての基礎的理解を得ることができた。 データによる解析の面では、上記アンケート調査の結果、日本の信用リスクの市場では流動性が低い場合もあり、価格データの扱いが難しいことが分かったため、高頻度データが利用可能な為替市場の分析を先行して進めた。為替市場とCDS市場はいずれも金融機関間の相対取引が基本であるが、市場参加者の多様性や商品性の違い、現物とデリバティブの違いなどがストレス時を含む価格形成に大きな違いをもたらしていることが推測される結果が得られた。こうした比較分析の暫定的な結果を踏まえると、個々の資産の価格評価の一要因としての流動性価値という側面と、市場機能として流動的な取引を可能とする要因は、相互に関連はしているものの、それぞれについて異なる手法による分析が重要であることが示唆された。この点も今後の研究を進めるうえでの指針となる成果と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りCDS取引についてのアンケート調査を実施し、データによる分析は、25年度の対象をよりデータ量が豊富な為替市場としたが、平時とストレス時の価格や取引量の変動等について一定の計量分析の結果を得ており、今後の研究を進める基礎となる進展があったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、取引の動機や態様等を明らかにするため、前年度に引き続き、CDSの市場参加者に対するアンケート調査を行う。25年度の同調査およびインタビュー調査の結果、日本のCDS市場は流動性が低い場合も多く、妥当な価格データの判断が難しいことが明らかとなった。このため、CDSについては、定性的な分析を中心に市場機能としての流動性がどのように確保されるかについて、より流動的とみられる為替市場とも比較しつつ、その要因等を考察する。 価格形成に関する定量分析は、高頻度のデータが利用可能な外国為替(東京市場)について先行して進める予定である。平時およびストレス時の価格変動の特質等については、25年度に行った予備的分析を踏まえ、26年度には、取引量にも着目して取引主体の行動モデルの候補となる分析枠組みを検討する。CDS-bond basisの分析は、購入可能なデータサービスの範囲で可能な問題設定を検討する。 流動性の問題は、取引参加者の構成や取引の仕組み等と関連する市場の機能としての側面と個々の証券の価格評価における一要素としての側面を分けて考えることにより問題設定を明確化できると考えられる。価格決定の要素としての流動性は、市場の機能や効率性の程度にも依存している。平成26年度においては、二つの側面の関係にも留意しつつ、金融危機などの市場ストレス時に特に顕在化する流動性やそのプレミアムについての理解を深めるため、米国など海外市場における最新の研究についての文献調査も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外市場のデータを広範にカバーしている情報データ端末サービスの利用経費を見積もっていたが、予算の範囲内で購入可能な適切なデータサービスが見つからなかったため。 日本市場を中心とした情報データ端末サービス及び日本市場の関連データを購入することとし、その他の経費は多少の変更はあるが、概ね当初の予定に沿った使用計画を見込んでいる。
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