研究課題/領域番号 |
25350440
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
前田 恭伸 静岡大学, 工学部, 教授 (60270980)
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研究分担者 |
淺野 敏久 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00284125)
森 保文 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会環境システム研究センター, 主席研究員 (30174387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ボランティア / 環境活動 / ICT / 環境団体 / 口コミ / WordPress / ページビュー |
研究実績の概要 |
平成27年度までの調査では、ボランティア参加と費用便益感は関係がないこと、ボランティア参加の情報は、自分から積極的に探して得られたものではなく、偶然に得たものがほとんどであること、ボランティアを募集する団体は比較的高齢の古い団体とSNSなどICTを活用する若い団体に分化するする傾向があること、古い団体は情報システムとしては電子メール、ウェブサイトなどを利用していること、SNSを活用している若い団体は、新規会員の獲得より会員間の連絡等にSNSを活用していることなどがわかった。またこれらを踏まえて社会実験のための情報システム「ボラいち」を構築した。28年度はこのシステムを用いて埼玉県入間市、千葉県柏市の2箇所で社会実験を行った。 入間市では、まず講習会を実施して、その結果からシステムの改良を実施した。次に10月の入間万燈まつり、11月の加治丘陵里山祭りにて、ボラいちによる参加者募集を試みた。その結果、万燈まつりでは本システムを通じてボランティア募集を知ったものが一人いたが、参加申し込みは別の経路で行った。里山祭りでは本システムから参加したものはいなかった。 柏市では、2月から3月にかけて実施された葦舟プロジェクトへの参加についてボラいちによる募集を試みた。その結果、募集開示から実施までの間に72件のページビューが観測されたが、そのうち実際に登録したのは2組であった。 これらの結果から、次のような知見が得られた。まず入間、柏とも、ボランティアを募集する団体からのシステムに対する評価は使いやすいと良好であった。ただ、ボラいちというシステムを単にインターネット上に公開するだけでなく、この存在を潜在ボランティア参加者に知らしめること、つまり機会を提供することがやはり必要であることが示唆された。多くの人々の関心を引くために、多くのイベント情報を掲載することが必要ではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の計画では、平成28年度は、「3つのフィールドに実装するための情報システムを構築し、社会実験を行う。そのためにクラウドサーバをレンタルし、実際のシステム構築にあたっては、ノウハウを持つ開発業者にプログラミング業務を委託する。」とあった。 実際には、千葉県柏市の手賀沼周辺地域と埼玉県入間市の2か所を対象として社会実験を進めた。当初の計画ではローカル・リージョナル・ナショナルという3つのレベルでの社会実験を想定していたが、開発したシステムでは、登録したボランティア希望者が、システム上で見つけたイベント(ボランティア参加の機会)に参加登録することを想定している。こういう場合、参加コストの少ないローカルなボランティア活動のほうが、参加形態として自然であると考えられる。このような理由から28年度は地域性の高いローカルな活動に的を絞って、社会実験を行った。 結果としては、必ずしもシステムの有効性を確認できるものではなかったが、多くの考察を得ることができた。まず、情報システムを構築することで、相当数のページビューを得られることは確認できた。一方で、それが必ずしも参加に結びついていないことも、データとして得られた。ボラいちというシステムを単にインターネット上に公開するだけでなく、この存在を潜在ボランティア参加者に知らしめること、つまり機会を提供することがやはり必要であることが示唆された。多くの人々の関心を引くために、多くのイベント情報を掲載することが必要ではないかと考えられる。 またこれら活動と平行して、昨年度のSNS利用調査をまとめ、環境科学会年会にて報告した。 以上の状況から、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では平成29年度は次のような予定であった。「社会実験の結果から、ボランティア-NPO 一般モデルと、実装した情報システムの性能に関する検証を行う。そしてその考察に基づいて一般モデルの精緻化を行う。」 年度の前半は、社会実験を継続し、知見を集める。これまで対象としてきた埼玉県入間市・千葉県柏市の他に、茨城県の霞ヶ浦流域及び、静岡県浜松市を含めることで、地域ごとの差異と地域にまたがる共通の知見と課題を抽出する。入間市では、万燈まつりでのシステム利用を更に拡げる。またボランティアを必要とするNPOに対しアンケート調査を実施することで、彼らがボランティアに求める役割や、従来のボランティア募集の方法について調べる。これは、NPO側の情報システムへのニーズを確かめるための調査である。柏市では、引き続き葦舟プロジェクトでの利用を進める。茨城県では霞ヶ浦保全のための活動へのシステム活用を検討する。浜松市については、佐鳴湖保全のための水質調査、葦刈りボランティア募集への活用を検討する。 年度の後半は、これまでの成果を論文にまとめ発表する。また、本研究の知見と課題を踏まえ、次期の研究計画を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算を超過しないよう注意して運用していたところ、123円の端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の直接経費の一部として使用する。
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備考 |
環境ボランティアを募集するための情報システム
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