研究課題/領域番号 |
25350442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
清水 良明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10109085)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロジスティックス / 巡回配送計画問題(VRP) / 組合せ最適化問題 / ハイブリッド解法 / メタ解法 / 不確定性 / 多目最適化 / リスク管理 |
研究概要 |
近年、市場や経営のグローバル化や地球温暖化が進行する中で自然や社会からの種々のリスクにさらされる危険が増大してきている。こうした背景の中でのロジスティックスの汎用的モデル化と最適化のための方法論を戦略レベルから運用レベル(巡回配送計画問題:VRP)までにわたって展開し、これらのメタ解法同士あるいはメタ解法と数理計画法との実用的で効率的なハイブリッド解法を開発した。 そして不確実な事象の生起やモデル中の不確定要因に対して復元力の高いレジリエントなロジスティックスネットワーク設計法について確率的最適化やファジイ最適化を通じた検討を進めた。そこでは事業継続計画(BCP)や事業継続管理(BCM)の重要性を意識してリスクや炭酸ガス排出量の低減化など社会的でインタンジブルな評価を含む多属性価値システムの設計を重要な課題として取り組み、低炭素社会、安心・安全社会の実現への貢献を目指した。 また、コストとトレードオフの関係にあるサービス価値と深く関わる製品発注点や在庫管理方式との連携を考察することで全体価値創出のための多目的最適化と関わる知見を移入した方法論の開発も進めた。 このような展開において、問題は複雑・大規模となり、結果として対象となる問題は極めて計算負荷の高い組合せ最適化問題となる。さらに運用レベルでの問題解法には動的な意思決定が求められることが少なくない。このため求解時間の短縮ならびに求解精度の向上が実用上必須となるため並列最適化手法の開発を含めた高速求解法を開発した。さらに数値的な計算結果の可視化を通じたユーサビリティの向上のためGoogle Maps APIの利用も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、リスクの増大、経済のグローバル化、経営システムの変革、物流と経営や他部門の管理機能との融合さらに環境問題などに対応するため、各種の産業においてサプライチェーン管理(SCM)の遂行が必然となってきている。ロジスティックス革新はこの中核をなし、特に近年では、物流品質や顧客満足の向上は当然としてリスク管理を通じた事業継続性(BCP/BCM)や環境対応や企業の社会的責任(CSR)の面から戦略性が特に求められている。 このため本年度の研究では、高度なICT技術や最適化技術と深く関わる最適化工学の視点から問題を本質的に捉えて、リスクや炭酸ガス排出量の低減化など社会の多様な要請に連携したロジスティックスネットワーク設計のための方法論の開発を行った。そこではこれまでの経験から商用の汎用ソフトウェアを問題毎に単純に適用する方法では現実規模の問題を解けないだけでなく、多様でダイナミックに変化する現実問題の解決手段としては極めて不十分であるとの認識の下で考察を行った。そして、多種多様な問題解法のテンプレートとなるモデルを元に問題固有の特徴に適応的な定式化と現実的な求解を可能とする方法論の展開とその有効性の検証を行った。 このように開発された方法論は実用性を有しており、この応用を通じて達成される成果は、リスク回避や予防、そして国際競争力の回復、さらに持続可能な発展(ライフサイクル工学)といった現代社会に共通する最重要課題の解決に貢献できることが期待される。このように初年度に幾つかの要素技術の開発と個別的応用を積極的に進めることができた。しかし諸般の事情により予定したエフォートまでは至らず、全般的な最終目標の下でのこうした取り組みの達成度は30%程度である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)全体価値支配下での最適化モデル 輸送のグローバル化やJIT物流は輸送に伴う環境負荷やリスクの増大を伴う。また輸送手段の選択(モーダルシフト)においても同様で、一般的に環境負荷やリスクと経済性の間にはトレードオフ関係が存在する。さらに経済性、レジリエント性およびサービス間においてもしかりである。このように概観しても明らかとなる価値の多面性やその特質をより詳細に分析し、全体価値協創のための最適化モデルを定式化し、その合理的解法について検討し、適応的な意思決定支援手順を確立する。なかでもNIMBY (Not In My Back Yard) の言葉に代表されるリスクや安全性など社会的でインタンジブルな評価やサービスや品質などの感性的評価を含む多属性価値システムの設計を重要な課題として取り組む。そして使用済み製品・部品のリサイクル、リユースの効率化を指向するリバースロジステックスに関する解析とシステム設計のための視点を含めてこうした考察を行い、低炭素社会、安心・安全社会の実現により一層貢献できる成果の導出を目指す。 (2)生産計画やスケジューリングなどの動的計画と設計との連携 本課題では、発注・在庫管理およびマルチモーダル輸送を含めた長期間モデルに基づく考察を指向することでより一般的な経済価値支配下での意思決定支援法を与える。このためには、多期間にわたる拠点配置と輸送手段の選択およびサプライチェーンメンバー間で交渉を伴う経営戦略などの視点からの総合的な対応が必要となる。ここではコストとトレードオフの関係にあるサービス価値と深く関わる製品発注点やJIT物流と関わる在庫管理方式を検討することを通じて全体価値創出のための経営工学的知見に基づく考察を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の所属研究機関の施設の約半年にわたる改修工事に伴う居室の一時的な移動や改修工事に伴う騒音・異臭等により、この間の研究に大きな不便宜が生じた。加えて、定年の年度とも重なっていたため、研究の進展に齟齬が生じ、当初使用計画からのズレが増幅され予算執行にも遅れが出たため。 そこで、平成26年度からの代表者の勤務形態の変更(専任教授より客員教授)に伴なう従来の単独の研究組織を見直して、協力して研究を進めることができる人的資源を補充することを目論んで予算の執行を特に進めなかったため。 平成26年度からの代表者の勤務形態の変更(専任教授より客員教授)に伴い、従来の単独の研究組織を見直し、協力して研究を進めることができる人的資源の補充を計画した。そして最近、学術振興会よりこの承認を得たので、当初の代表者の使用計画に加えて、こうした研究体制の補強に伴う協力者の分担金に充てる算段である。
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