研究課題/領域番号 |
25350444
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 悦子 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (60311784)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 港湾 / モデル化 / アルゴリズム / コンテナターミナル |
研究実績の概要 |
近隣アジア諸国に比べて国内港湾は相対的な地位の低下から、港湾コンテナターミナルでは、サービス向上に向けて荷役機器の高度化等ハード面での対策が盛んに行われている。しかし、ソフト面での工夫も必要であり、例えば海外の大規模ターミナルでは1ターミナルに異なるタイプのマシンが採用されている。複数タイプのマシン導入効果が発揮できる規模は明らかではなく、マシンの種類や運用方法によっても結果は異なる。これを検討することは国内外問わず、1種類のみで十分であるという判断基準も見出せる。そこで本研究では、1ターミナルに複数タイプの荷役機器を導入可能であることを前提に、最適な運用規模決定と各マシンの担当エリアの割当が行えるモデルを構築する。 当該年度では、世界のコンテナ取扱ランキング上位30位までのターミナルを対象にターミナルレイアウトと荷役機器の併用状態について調査し、ターミナル形状は4つ程度に分類できること、荷役機器の併用はターミナルの規模と形状に影響し、特定のある港湾においてのみ特徴を見出すことが出来た。 また前年度には構築した意思決定の評価モデルとして、コンテナのヤード配置最適化で評価できるモデルを構築したが、本年度ではさらにこのモデルの高度化し、コンテナ配置の最適化だけでなく、船の係留位置の最適化を同時に行うことが可能なモデルを構築した。意思決定の範囲が広がると、それだけ問題が複雑化することから計算処理時間の延長も懸念される。そこでデータの取扱い等の工夫により、他の研究者による既存研究との比較を行って、計算結果ならびに処理時間ともに既存研究より良い結果を示すことが出来た。 また今後の展開として、荷役クレーンと同時に必要とされる搬送車両に着目すると、搬送車両のコントロールの仕方は、運用効果に大きく影響することは、既往の研究からも明らかであり、搬送車両の運用に関しても既往の研究を発展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数タイプの荷役機器が同一ターミナルで利用されるケースについて、より詳細な整理を行った結果、ターミナルの規模には関わらず、複数タイプのマシンが採用されており、ターミナル内での割当状況は、岸壁側・内陸側に区別されるケースが多く、本船荷役と内陸側荷役を分けたモデル化が必要であることがわかった。 またターミナルレイアウトに関連して、先の調査で様々な形状を有することから、4つの形状に分類し、各々の形状で通路位置が保管容量を左右する度合が異なるため、通路配置を最適化する問題として定式化し、これによって得られた通路位置でコンテナ配置を最適化した。従来のような通路を等間隔で配置する場合と比べて、通路配置を最適化した結果、いずれの形状でも提案した方法での効果があり、世界で最も使用される長方形においても、通路位置を等間隔に限定せず最適化して決定した方が良いという結果になった。 荷役機器のタイプを世界で最も広く利用されているタイヤ式門型クレーン(RTG)に限定して、評価に用いるコンテナ配置の最適化問題を、船の係留位置を最適化する問題と組み合わせる問題に拡張し、両者を同時に最適化する解法アルゴリズムの提案も行った。海外の他の研究グループが開発したアルゴリズムと比較して、目的関数である総サービス時間、ならびに計算時間(CPU時間)も短くて済むことがわかった。 ヤードトレーラーの動きに着目して、従来と異なる運用方法を提案している。同時期に稼働する岸壁クレーンの荷役パターンの組合せが結果にどのように影響するかを調べた。上記の部分問題の結果を反映させて、最終的にシミュレーションモデルを構築し、一定期間の船の到着から出港、並びに内陸からゲートを通過してやって来るトラックへの荷役も行う必要があり、本船荷役のモデル化だけでなく、内陸側荷役のモデル化も行っている最中である。
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今後の研究の推進方策 |
異なるタイプの荷役機器を同一ターミナルで同時に採用しているターミナルの特徴を踏まえて、荷役シミュレーションのモデル化の範囲を本船荷役と内陸側の荷役に、それぞれ同一または異なるマシンを用いて両者をモデル化し、どのような状況下で異なるマシンを採用する効果があるのかを検証する。モデル化の一部は進んでいるが、数値実験を行う所までには至っていない。具体的には、特に内陸側荷役のモデル化で、文献レビューやその他の情報収集を含めて、具体化を進めている最中である。 最終的には、荷役機器のタイプを本船荷役と内陸側荷役で同一のものを導入する場合と、異なるものを導入する場合で、どのような状況下に適するかを検証する予定である。そのため、荷役シミュレーションのモデル化は2タイプ必要である。また前年度までに構築した、コンテナ配置最適化、搬送車両のコントロール最適化などの様々な意思決定モデルは、上記シミュレーションモデルで使用され、これらの関連性をうまくモデルに反映するための工夫も必要となる。 内陸からの貨物(ローカル貨物)を取扱うにはゲートイン・アウトの状況を表現する必要があり、本船荷役と内陸側荷役との接続部分を含めたモデル化と数値実験の検討を行う。モデル化の目的は入力データに依存せず、これが変われば国内だけでなく、海外のターミナルの現象も表現できる。そこで国内外の学会への参加、情報収集ならびに意見交換を行う予定である。 計画通りに研究を遂行するための課題としては、モデル構築後、数値実験を行う際の入力データの妥当性に関する問題である。従来の方法に関するデータで実験して、再現性を確認すれば、その妥当性を見出すことが出来る。このことから、計画通りに行かないケースは、再現性の確認に時間を要する場合が考えられ、モデル構築と改良には学外者の研究協力が必須となり、情報交換を密に行って計画通りに進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績や今後の展開などで述べたように、本研究を遂行するにあたって、複数の意思決定モデルと荷役シミュレーションモデルを構築し、これらを組み合わせることで研究成果の公表することができる。現段階において、全てのモデルが完成している訳ではなく、複数モデルを組み合わせるためのモデル構築を当該年度において完成させて、数値実験に至る予定である。そのためには、最終年度の予算が当該年度に比べて少なく、最終年度に行う予定のシミュレーションモデル構築とその改良作業には学外者の協力が必要となり、打ち合わせの旅費が必要となる予定である。また数値実験、ならびに関連した情報収集と意見交換に係る物品費ならびに旅費の確保が必要になる予定である。したがって、一部を最終年度で利用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度では、ある程度、研究が進んでいる部分について国内外で学会発表を行うことで、研究者レベルでの意見交換を行って現時点の検討内容について確認を行うとともに、課題や改良すべき点を洗い出し作業を行う予定である。最終年度である当該年度において、モデルの構築と、数値実験を行いながらのモデルの改良を行うために、打合せ旅費やその他情報収集のための経費が必要になる予定である。また関連する図書の購入も必要であり、また港湾やコンテナ輸送関連の文献資料も購入予定であり、これに支出予定である。 また国際学会参加や打合せの際には、港湾ターミナルの現地視察や関連情報の収集と意見交換も同時期に行うことが出来るため、不足している情報確保にも学会への参加は重要であり、学会参加旅費と参加費に使用する予定である。
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