研究課題
ウォーターフォール型開発方式の下でのプロセスとプロダクトの品質に影響を及ぼすV&V視点からみた要因分析に関する平成25年度の研究成果に基づいて,平成26年度は,まず次世代型ソフトウェア開発プロジェクトについてプロセス品質およびプロダクト品質に影響を及ぼす要因分析を行い,定量的品質・信頼性評価技術について議論した.さらに,品質指向ソフトウェアマネジメントの定着化のための定量的プロジェクト評価法の提案を行った.定量的プロジェクト評価法については,以下の2点が研究成果のポイントである.(1)次世代型ソフトウェア開発プロジェクトであるオープンソースプロジェクト方式とアジャイル開発方式に対するプロセス品質要因と,対応する各フォールト検出過程でのプロダクト品質要因をまとめ,それらの関係把握および相関分析を行った.その結果,前者の開発形態ではバグトラッキングシステム上のフォールト登録日とフォールト重要度および障害報告件数を,後者の開発形態ではイテレーション回数・実行テストケース数・実装開発規模・実績開発工数とシステムテストでの検出フォールト数を取り上げることにした.(2)分散ソフトウェア開発手法であるオープンソースプロジェクト,およびプログラムを常に実行可能な状態に保って確認・拡充していく段階的拡充(インクリメンタル)開発を行うアジャイル開発手法に対して,(1)のプロセス品質要因の抽出と,それらが出荷品質としての品質・信頼性に影響を及ぼす影響度合いを考察し,プロジェクト全体を可視化するような定量的プロジェクト評価法としてソフトウェア信頼性モデルと管理図法の適用が有効であることが分かった.
2: おおむね順調に進展している
オープンソースソフトウェアプロジェクトに関する定量的品質・信頼性評価技術については,バグトラッキングシステム上のフォールト登録日および障害報告件数のデータに基づいて,当該プロジェクトのフォールト検出率に不規則性を導入して累積発見フォールト数の挙動を記述する確率微分方程式モデル,オープンソースソフトウェア(OSS)を利用したクラウドサービスを考慮してフォールト発見事象にネットワークトラフィックの要因を導入したハザードレートモデリング等のいくつかの有望なソフトウェア品質・信頼性評価法を議論できた.アジャイル開発方式については,実際プロジェクトデータが少ない中,ソフトウェア信頼性モデルに基づいて,開発時間の代用メトリクスを用いて,定量的品質・信頼性評価が可能であることを示した.
今後は,次世代型ソフトウェア開発方式の定量的プロジェクト評価法に焦点を当て,本年度の研究成果から以下のように,実際データを使って管理図法によりプロジェクトの進捗状況を可視化することを考える.(1)オープンソースソフトウェアプロジェクトに対しては,検出可能フォールト数が無限大となる可能性を考慮して,非同次ポアソン過程に基づく対数型ポアソン実行時間モデルを適用して,回帰分析に基づく管理図を作成し,バグトラッキングシステム上に登録される障害数の挙動を把握し,プロジェクトの進捗性を見る.(2)アジャイル開発方式に対しては,イテレーションの経過に伴う開発規模当りまたは実行テストケース数当りの検出フォールト数の挙動を,欠点数管理図法として知られるu管理図を適用して把握することにより,プロジェクトの安定性を見る.
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