畜産業における種畜の交配計画を作成するための,モデルおよび組合せ最適化手法の開発を行った。 畜産物全体の価値を高めるためには,種畜の交配により能力を向上させることが有効である。交配計画は,複数の能力の最大化と近交係数の最小化を含む多目的組合せ最適化問題となる。これまで,手作業による計画案作成と検証が多く行われてきたが,これらを自動化する試みによって,大幅な時間短縮が実現される等の成果をあげてきた。種豚の交配を例に,これまで用いられてきた手法とシステム化の成果を整理した。 次に最適化問題について整理し,これに対応する最適化アルゴリズムを提案した。利用した手法は,ヒューリスティックであるグループ化とラウンドロビンによるもの,グループ内の育種価と近郊係数を利用した優先順位によるもの,そして全体最適解を探索する遺伝的アルゴリズムの応用によるものである。しかし,最適解の探索は最新の計算機を用いても,多世代の交配のような指数関数的に増加する組合せに対応することは難しい。このため,ヒューリスティックの組合せや,現実的な制約を入れることによる範囲の限定は必須であった。これらの複合手法と,複数世代の最適化について,まずは部分的な最適解を求め,徐々に世代数を拡大する方法を提案した。これらの手法について,数値実験によって有効性を示した。 これらの結果をもとに,今後の計算機の高性能化によって実現する,より高度な最適化とその課題整理を行った。
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