研究課題/領域番号 |
25350449
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
瀬尾 明彦 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (80206606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人間工学 / 作業姿勢 |
研究実績の概要 |
本年度は,前年度のデータの追加の解析と学会発表,本年度の予定であったメンテナンス作業に関係のある最大リーチ動作と車いす作業時の姿勢の分析,それに実作業測定で得た複数の姿勢テンプレートを合成して平均テンプレートを生成するシステムの開発を行った. 前年度のデータの追加解析については,スイッチ押し作業・押し作業,仰臥位作業の実測実験について行った.スイッチ操作と押し作業では,操作物の条件に応じて姿勢と身体負担が変わるが,特に高い位置と低い位置で姿勢の生成に差位があることが明らかになった.仰臥位では,姿勢の変化は小さいが,作業条件に応じて床反力の作用点が変わり,それに応じて体幹部の身体負担が変わることを考慮する必要があった. 最大リーチ動作については,操作方向に応じた肩周囲の動きと筋活動を分析した.肩の動きは操作方向にはあまり影響を受けなかったが,筋活動はその操作方向に応じた筋が選択的に活動することを確認した.それを含めた負担評価モデル式を構築し,最大リーチ周辺での作業の負担の数値化の手続きが明らかにできた.車いす動作については,昨年度と同様な操作物の位置の条件(高さ・水平距離・方位)に加えて車いすの設置方位を変えた実験を行った.その結果,車いすの方向に応じて上肢だけでなく体幹の動きが大きく変化し,専用のテンプレートが必要なことが確認できた. これまでの実験データにより得られた実測テンプレートを活用して姿勢の自動生成機能を向上させるため,個別の実測テンプレートの平均を求める機能をデジタルヒューマンのシステムに組み込んだ.計測したデータが静的な場合と動的な場合の両方に対応出来るようにした.これにより,条件間の違いを平均化して比較できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初はメンテナンス場面を想定した最大リーチ動作としゃがみ動作,それに福祉場面を想定した車いす動作について検討をする予定であった.このうち,最大リーチと車いすについては実験も実施できて十分に達成できた.ただししゃがみ姿勢と車いすでの実験は,前者は体自体,後者は車いす自体が計測上の障害物となるために実施が難しく,それに対応するために前年度までに構築した姿勢計測システムの拡張を優先して行った.これにより予定していた実験のうちしゃがみ姿勢の実験は次年度に回し,車いすの実験のみ行った.これについては,本年度に障害物により強い計測システムが構築できたので,次年度には確実に実施可能と見ている. 実験に基づく姿勢テンプレートの生成とそのデータ補間の機能およびそれを利用した負担の可視化の機能は,前年度から更に拡張されて順調に開発が進んだ.姿勢テンプレートの生成については,静的な複数テンプレートの平均を求めるだけでなく,動的なテンプレートに対してもアンサンブル平均が求められるように拡張した.これらの内容については,平成27年度に開催される学会で発表することが既に決まっている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,当初の計画にそった内容通りで進める予定である.すなわち,昨年度までに構築したシステムを利用し,従来手法との比較と模擬作業実験により妥当性の検証を行う. 従来手法との比較では,OWAS(Ovako式姿勢評価法)あるいはRULA(迅速上肢評価法)についてその姿勢コードのすべての組み合わせで生成できる現実的な作業条件を抽出し,それぞれの手法による評価結果と本手法での評価結果とを比較する.最近,生体力学モデルによる腰部負担評価について,複数の手法・ツールを比較した論文が出ている.この論文でも上記と同様に上肢のみを使う姿勢・全身が大きく動く姿勢・重量物を取り扱う姿勢などいくつかの姿勢を選択し,評価値を比較して相互の妥当生を検討している.本研究においてもそれを踏襲した手続きを利用する.総合的な負担評価については,もし評価に相違がある場合は,必要に応じてその分析と再度の調整の可否を検討する. 模擬作業による妥当性の検証では,従来手法では要因に含まれていない条件を持つ作業を想定している.前年度に検討していた繰り返し回数も1つの要因であるが,それ以外に視認の必要性の影響や次の動作との組み合わせの影響がある動作を想定している.いずれも,いくつか条件を変えて実測データ(姿勢・筋電図・主観評価など)を収集する.作業条件からシステムにより生成される姿勢等による評価値と実験での実測値による評価結果とを比較することにより,妥当性の確認を行う.
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