本年度は、前年度までに行った実験研究の成果の論文化と構築した姿勢評価システムの可視化機能の向上を行った上で、妥当性の検証のための研究を行った。 可視化機能の向上については、与えられた作業位置を中心に、所定の上下・前後・左右の空間に作業点が移動した場合の作業姿勢を自動生成し、その姿勢評価値を立体グラフで示す機能を構築した。これにより、ある作業空間での評価値の高低が可視化され、評価値の探索結果の妥当性が確認しやすくなった。そのうえで、最適化手法の1つである滑降シンプレックス法を用い、身体負荷の評価値が最少となる最適作業位置を探索できる機能をシステムに組み込んだ。 妥当性の評価法として、従来から姿勢評価法として利用されているOWAS法、RULA法、REBA法の3手法との評価値の比較を行った。いずれの評価法もデジタルヒューマンに組み込み、今回開発したシステムと同じ姿勢での同時評価が可能になるようにした。その結果、手に外力がかからない条件では、OWAS法とREBA法の2手法と今回開発した評価法は高い相関を持つことが確認できた。しかし上肢評価法であるRULA法との相関は低く、また外力がかかる場合はいずれの方法とも相関が低かった。RULA法との相関が低かったのは、本研究の評価値が関節トルク比を重視して関節角の影響が反映されにくいためと考えられた。また、実測データと比較したところ、最適化で探索を行うと体に近い位置は姿勢に寄らず関節トルク比が小さくなるため、不自然な姿勢が選択される場面が認められた。そのため、関節角による影響を加味した評価値を生成できるようにシステムの拡張し、妥当な姿勢が生成されるようになった。
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