本研究では,多品種の商品を対象として,「商品特性に応じた最適在庫補充方式に関する研究」を行った. まずは,補充方式の決定に大きな影響を及ぼす需要の間欠性に着目した.従来研究では需要が正規分布に従うことを前提として在庫補充方式を利用してきた.しかしながら,商品の出荷データ(実データ)が正規分布に従っている方がむしろまれで,多くの場合は商品の輸送コストなどの関係からまとめて発注されており,実際には需要量がゼロとなるときが最も高頻度で発生している.このような間欠需要のモデル化では,需要の「量」と「間隔」を異なる確率分布で捉えることとし,「需要量」には正規分布を,「需要間隔」には幾何分布を想定した.評価指標は欠品費用と在庫費用の和を総費用と定義し,その総費用が最小となるような補充点を決定するモデルを提案した.数値実験では,需要の間欠性や調達リードタイムの長さなどの主要なパラメータを変化させ,提案方法の特徴・頑健性などを確認するとともに,需要の間欠性を考慮した従来研究や本提案モデルで需要に正規分布を仮定した場合などと比較することにより本提案の有効性を検証した. 次に,出荷統計量をもとに多数の商品を複数のグループに分類し,各グループに対して本研究で提案する在庫補充方式を含めた最適な在庫補充方式を選択するための最適化モデルおよびその解法を構築した.本問題は,決定変数・制約条件が多く非常に複雑な組合せ最適化問題であり,数理計画問題として定式化したモデルを市販の数理計画最適化ソフトで厳密解を求めることは極めて困難である.従って,従来研究で大きな成果を挙げてる遺伝的アルゴリズムを応用することにより効率的なアルゴリズムを開発した.そして数値データを用いることにより提案する解法の特徴や限界を明らかにし,様々なタイプの出荷実データを得て,提案するモデルの実問題への適用可能性を検証した.
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