研究課題/領域番号 |
25350458
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
大倉 元宏 成蹊大学, 理工学部, 教授 (30119341)
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研究分担者 |
稲垣 具志 成蹊大学, 理工学部, 助教 (20609945)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 視覚障がい者 / 単独歩行 / 鉄道利用 / 転落防止 / データベース / バリアフリー / 二次課題法 |
研究概要 |
視覚障害者の駅プラットホームからの転落事例をWEB上で入力できるシステムを開発し、試験を経て、運用を開始したのが本年度の大きな実績としてあげられる。ただし、運用開始と同時に普段親しくしている歩行訓練士をシステムに登録し、事例の入力を依頼したが、集まったのは現在のところ4例である。訓練士の所属機関における個人情報の取り扱いについて決まった方針が確立されていないのがネックの一つとなっている。 収集した事例をインターネット上に公開するためのデータベースサーバシステムについてはユーザインターフェース部の概略について検討を行った。事例データの検索にあたってはキーワードの選択を行うが、その選択の容易さがユーザインターフェースの鍵となる。 事例収集と並行して、交通バリアフリー法の施行前後でのプラットホーム上の移動しやすさに関する面接調査を行う予定であったが、実施が遅れている。これは、平成25年度途中において、さまざまなタイプの転落防止用のホームドア・柵が実用に向けて試験施工されたので、これらを加えた形での面接を行おうと考えたためである。 面接調査に代えて、平成26年度に実施予定であった、二次課題法を応用したフラットホームの不備な箇所の同定に関して予備的な実験を先行開始した。単独行動に慣れた視覚障がい者の参加を得て、島式プラットホームにおいてテストルートを定め、二次課題を行いながら移動することを求めた。その結果、明確なランドマークのないところでの方向転換やホームの中央部を長軸方向に移動するなど、オリエンテーションに関する手がかりの少ない状況・条件において二次課題の成績が低下し、心理的余裕のなくなることが認められた。 加えて、直進を維持させるための歩行前の触覚的手がかり、すなわち、直進方向に対して垂直な手がかり/平行な手がかりの効果について試験的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
WEB上から転落事例を入力するシステムの運用は開始したが、初年度は期待したほど事例は集まらなかった。個人情報の取り扱いについて関係機関においてまだ方針が定まっていないのがネックの一つである。 データベースサーバの設計については予定通りのペースで進んでいる。 交通バリアフリー法の効果を問う面接調査は転落防止用のホームドア・柵を質問に加えるために延期したが、その代わり、二次課題法を応用したフラットホームの不備な箇所の同定に関して予備的な実験を先行開始した。 以上、達成度を総合すると、転落事例が期待通り集まっていない分、やや遅れ気味と認識している。
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今後の研究の推進方策 |
転落事例の収集については、全国の歩行訓練士に呼びかける。7月に全国の歩行訓練士が集まる会議が予定されており、そこでアナウンスする枠を確保した。個人情報の保護に関してはある公的なリハ施設と取り扱いについて合意ができたので、その方式をもとにすれば他の機関でも承認を得られると考えている。各歩行訓練士はすでに転落事例を有しているので、この点がクリアされれば、多くの事例収集が期待できる。 転落事例のデータベースは、晴眼者だけでなく、当事者も閲覧するので、ユーザインターフェースの設計については、ユニバーサルデザインの観点が必須となる。 転落防止用のホームドア・柵はその方式がほぼ出そろった感があるので、それを含めてバリアフリー法の効果を問う面接を実施する。 二次課題法を応用したフラットホームの不備な箇所の同定に関しては、上記の面接調査の結果も踏まえ、歩行スキルの異なる視覚障がい者の参加を得て、データの蓄積を図る。
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