平成27年度は、4月に大学経営学部長の要職に思いがけず就任したこと、ならびに大学院博士後期課程に在学する大学院生の研究指導のため、年度当初に立てた計画は十分に達成できなかったのは残念であったが、下記の成果を得ることができた。 (1)SCMを含む多数の在庫点を有する多段階生産在庫システム(平準化された発注指示方式等を含む)における在庫水準決定アルゴリズムの性能について、数値実験を実施し、単位在庫保管費用と単位品切費用と品切れ率のパラメータ間に望ましい関係が成立しない場合についても、提案したアルゴリズムがよい結果を与えることをシミュレーション実験で検証した。この結果は、日本機械学会生産システム部門研究発表講演会No.16-9(2016年3月)において研究発表を行った。 (2)季節変動を考慮したときの生産平準化の方法を提案し、その性能をシミュレーション実験によって検証した。季節変動を考慮したMRP方式は、計画ロジックの原理から優位性が発揮されると予想したが、本研究で提案した3番目の方式がもっとも優れており、約20%程度の費用削減効果のあることが数値実験で示された。季節変動が小さいとき、提案手法の費用削減効果はもっと大きくなる。結果の一部は、日本生産管理学会第43回全国大会(2016年3月)において研究発表を行った。 (3)SCMにおいては在庫削減が一つのキーワードとなるが、在庫削減の経営財務上の効果について考察し、売上高を棚卸資産で割った棚卸回転率など棚卸資産を使った経営指標が生産性の指標であることなどを数学的に証明した。これらの結果は、日本経営診断学会第48回全国大会(2015年9月)において研究発表を行い、2016年4月に学会誌論文として投稿済みである。
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