研究課題/領域番号 |
25350479
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
小野 貴彦 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (20312613)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 救急搬送 / 経路探索 / 搬送時間 / 血圧変動 / 背面圧迫 / 走行モデル / 多目的最適化 |
研究実績の概要 |
患者の病態や緊急性に応じて,許容される搬送時間,血圧変動の大きさ,身体の圧迫度が異なる点に着目し,血圧変動量および背面荷重変動量を推定する数理モデルを用いて,救急車の最適な搬送経路を見いだすことを本課題の目的とする.
平成25年度では,多目的遺伝的アルゴリズムを用いて,搬送時間と血圧変動量の積分値をパレート最適の意味で最小にする搬送経路の導出に取り組んだ.この経路導出では,救急車の平均速度が30km/h程度であるという点に着目し,すべての道路で最高速度を30km/hに固定し,かつ交差点通過時には常に減速するという条件で探索した.しかし,実際の搬送では,道路の規模や法定速度によって最高速度は変わり,交差点を通過するたびに減速することもない.
そこで平成26年度は,救急搬送の実情に合わせた走行モデルを構築した.このモデルでは,右左折する交差点と信号機のある交差点のみで減速し,減速する交差点間の道路では,速度が台形的に変化するように設定した.走行モデルのパラメータは,最高速度,加速時加速度,減速時加速度,右左折する交差点の通過速度,信号機のある交差点の通過速度とした.広島市で計測した90搬送分の救急車の実測データ(GPSと3軸加速度情報)を用いて,実際の搬送時間(J1)と車両加速度から推定される血圧変動量の積分値(J2),および走行モデルから推定される搬送時間(J1e)と血圧変動量の積分値(J2e)を求め,誤差E1=J1-J1eと誤差E2=J2-J2eがパレート最適になるようにモデルパラメータを一意に決定した.90搬送のすべてにおいて,E1=0,E2=0を達成することは出来なかったが,E1とE2の平均値が0に近くなるように各パラメータの値を決定することが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度の課題は,救急車の実情に合った走行モデルの構築,モデルに基づいた搬送経路の導出,導出した経路と実際の救急車の搬送経路を比較して妥当性を検証することであった.走行モデルのパラメータの一つとして最高速度を設けたが,これを決定するに当たり,法定速度から大きく外れないように設定することが重要と考えた.しかし,地図データに法定速度が登録されていないケースが非常に多く,手作業で地図データに埋め込む作業を余儀なくされ,多大の時間を要した.搬送時間と血圧変動を考慮した走行モデルは得ることが出来たが,当初予定していた背面荷重変動まで考慮した走行モデルの導出までは至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
搬送時間,血圧変動,背面荷重変動を考慮した走行モデルを完成させ,平成25年度に作成した多目的遺伝的アルゴリズムによる経路探索プログラムに走行モデルを組み込み,患者の病態と緊急性に応じた救急車の最適搬送経路を見いだす.また,搬送時間,血圧変動,背面荷重変動の観点から,実際の救急車の搬送経路との比較を行う.続いて,カーナビゲーションとしての実現可能性を探るために,先に得られた最適搬送経路をダイクストラ法で得るための方法を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度は,救急車の実情にあった走行モデルに基づいて搬送経路を導出し,走行時間及び血圧変動の観点から,実際の救急車の搬送ルートと比較して,導出した経路の妥当性を検証する予定であった.そのため,ストレッチャーを搭載可能な福祉車をレンタルして,導出した経路上を被験者を乗せて走行し,比較に必要なデータを収集する予定であった.しかし,走行モデルの作成が遅れたため,経路導出が完了しなかった.物品費及びその他の費目において,次年度使用額が生じた理由は,H26年度に予定していた福祉車のレンタル及びデータ収集に必要な物品購入を,H27年度に変更したためである.
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に福祉車のレンタル及びデータ収集に必要な物品購入のために使用する予定である.
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