研究課題
昨年度に続いて,大規模噴火の共通した特徴を検討するため文献調査を実施するとともに,インドネシアで2013年に発生した大規模噴火の堆積物を調査した。スミソニアンの火山噴火データベースを用いて,火山帯,火山地域,火山毎の噴火規模と噴火頻度を統計的に検討した。そこでは,千年当たり噴火頻度を対数にとって横軸に火山爆発指数をとると,さまざまなエリア・スケールでべき乗側が認められた。噴火に規模によって,噴火記録保存率の年代依存があるため,これを考慮しないと緩い勾配のべき乗側が得られる。ただし,保存率をある程度考慮しても,南九州地域などの火山地帯は,勾配の緩いべき乗則が得られる。一方,十分に噴火記録が地質学的に解読されている北海道東部の火山地域では,世界中の火山に見られると類似の勾配のべき乗側が認められる。緩い勾配のべき乗則はおそらくより小さな噴火を反映していない結果と考えられる。これらのことをまとめて論文にし,投稿した。インドネシアのケルート火山で起きた大規模噴火(ここでは火山爆発指数4)は,高度20km以上に達したプリニー式噴火の噴煙柱が崩壊して火砕流が発生したが,現地調査により,プリニー式噴火に先行して,ブラストを伴う爆発的噴火が起こっていたことが明らかになった。これは既にあった溶岩ドームを吹き飛ばしたために,最初に起きた爆発的な噴火であると位置づけられる。そのため,規模の大きな噴火の予測に当たっては,火口の形状や状態を考慮した噴火シナリオを作成することが重要であるといえる。
2: おおむね順調に進展している
日本のカルデラ噴火の噴出物を調査することが一つの調査項目に上げてあったが,インドネシアの調査に重点を置いたため実施できなかった。しかし,噴火の規模と頻度について統計的な結果をとりまとめて論文にすることができた。また,インドネシアのケルート火山の噴火プロセスについては,複数の国際会議に招待されて講演を行うことができるなど,本研究内容に相応しい成果が得られた。
来年度は最終年度になるため,これまで得られて統計的な解析結果およびインドネシア・ケルート火山噴火の調査結果,および日本のカルデラ噴火や富士山の先行研究の結果をもとに,大規模噴火の頻度と推移をとりまとめた噴火シナリオを作成する。ただし,前兆現象についてはまだ十分に検討していないので,文献調査を中心に行い,前兆現象を含めた噴火シナリオを検討する。
南九州へ予定していた野外調査が実施できず,旅費が使用できなかったため。代わりに実施したインドネシアの火山の現地調査は旅費は他経費から支出したため旅費が計画より少なくなった。また同様に予定していた成果発表のための海外の学会への参加旅費が招待側から支出されるなど別経費から支出できたため。
南九州の現地調査旅費,文献調査に必要が経費,成果を取りまとめるためのPCソフトの購入費用,および,成果を海外の学会で発表するための旅費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
火山
巻: 60 ページ: 印刷中
Papale, P. et al. (eds), "Volcanic Hazards, Risks, and Disasters", Elseveier
巻: 1 ページ: 355-376
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Bulletin of Volcanology
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科学
巻: 84 ページ: 48-52