研究課題/領域番号 |
25350494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
神田 径 東京工業大学, 火山流体研究センター, 准教授 (00301755)
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研究分担者 |
小川 康雄 東京工業大学, 火山流体研究センター, 教授 (10334525)
小林 知勝 国土地理院(地理地殻活動研究センター), 地殻変動研究室, 研究官 (40447991)
丹保 俊哉 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, 学芸員 (10574311)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 火山災害 / 水蒸気爆発 / 比抵抗構造 / 地盤変動 / 熱水流体 |
研究概要 |
平成25年度は、年次計画に従って、【ア】比抵抗構造調査、【イ】微細構造調査、【ウ】InSAR画像の解析、【エ】地中温度観測を実施した。項目【ア】については、9月に地獄谷を横断する8ヶ所でAMT法を用いた調査を行った。【イ】については、当初予定していた高密度電気探査ではなく、スリングラム法による電磁探査を9月~10月にかけて行った。【ウ】については、現在運用を終えているALOS衛星により取得された過去のデータ(2006~2011年)を使用してInSAR解析を行った。【エ】については連続観測を2箇所で実施している。 比抵抗構造調査からは、地獄谷を横断する二次元比抵抗断面が得られた。その結果、地獄谷の直下には低比抵抗体が広がり、その下500m以深では高比抵抗体が存在することがわかった。また、相対的に低い比抵抗値を示す領域が、高比抵抗体を割るように地獄谷浅部へと伸びている。浅部の低比抵抗体は、より低比抵抗を示す上部と、相対的に高比抵抗の下部に別れており、上部は熱水を含んだ粘土混じりの堆積層、下部は、熱水に高温のマグマ性ガスが付加されたものであると解釈した。粘土層は透水性が悪いため、この低比抵抗体上部が、下部に存在する火山ガスを留める蓋の役割を果たしている。深部にある高比抵抗体は、地獄谷周辺に広く露出する基盤の花崗岩であり、この基盤岩を割り浅部低比抵抗体へと伸びる相対的低比抵抗の領域は、火山ガスの供給路である可能性がある。 InSAR解析からは、地盤変動を捉えるには未だ至っていないが、弥陀ヶ原付近のみが良く干渉して計測可能であることが確認できた。今後変動が生じた場合には、InSAR解析によって地盤変動が捉えられる可能性が高い。 以上より、地獄谷直下には水蒸気爆発の発生場となりうる構造が500m以浅の極浅部に認められたが、これまでのところ地盤変動を伴うような顕著な圧力増加はないと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の柱である比抵抗構造調査については、測定されたデータの性質が良かったこともあり、二次元構造解析ながら、水蒸気爆発場に顕著に見られるキャップ構造や、火山性流体の供給経路のイメージングに成功しており、期待していた以上の成果が出ている。InSARによる地盤変動解析については、現在までのところ過去のデータの解析にとどまっているが、検出限界を超えるほど大きな地盤変動は発生していないということが確認できた。微細構造調査については、解析手法の整備が遅れており、測定データを比抵抗構造にモデル化する作業に進めていない。なお、地中温度観測については順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
比抵抗構造調査については、観測領域を拡大して測線ではなく面的にデータを取得する予定である。これにより3次元解析を行うことが可能となるので、前年度までに得られている2次元構造モデルの精緻化を目指す。 地盤変動解析については、今年度ALOS衛星の後継衛星であるALOS-2の打ち上げが予定されており、より精度の良いInSAR画像データの取得が期待される。しかし、打ち上げ自体が当初計画より遅れているため、万一今年度にデータの入手ができない場合は、既存のALOSデータをより詳細に検討する予定である。 微細構造調査については、25年度に実施したスリングラム法のデータ解析を急ぎ、AMT法による比抵抗構造へのインプットとする。また、25年度に実施予定であった高密度電気探査の実施を検討する。温度観測については引き続き継続して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は主に二点ある。まず、微細構造調査のために高密度電気探査装置の借り上げ費用を計上していたが、今年度は別の手法(スリングラム法)による調査を実施したため、借り上げ費用の支出がなくなった。また、観測機材等の運搬のために立山有料道路の通行料金を計上していたが、分担者の所属機関(立山カルデラ砂防博物館)が無料通行措置を受けている車輌を本研究に使用させてもらうことができたため、通行料金の支出がなくなった。 基本的には26年度の調査費用として使用する予定である。26年度は、AMT法による比抵抗構造調査の本調査を実施する予定であり、観測点を増やすため、作業人員の増加および日程の延長等を予定している。このための旅費として使用する。また、25年度に実施できなかった高密度電気探査を実施する方向で計画している。
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