研究課題/領域番号 |
25350495
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 亮一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00293184)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地震 / 津波,洪水 / 被災地観測 / レーダポーラリメトリ / リモートセンシング / 合成開口レーダ / 偏波散乱解析 / FDTD解析 |
研究実績の概要 |
本年度は主に,PolSARデータを用いたおよび「被災住宅地域の識別」を実現するため,以下の研究を行った. 1. 被災住宅の識別 地震等により変形あるいは半壊した住宅を精度良く検出・識別するために,まずは被災前の住宅の識別精度を向上させる2種類の新たなアルゴリズムを開発した.一つめは,昨年度の研究成果を基に,円偏波基底におえるPolSARデータの主偏波間の相関係数とその正規化円偏波相関係数を適切に組み合わせるためのアルゴリズムで,レーダ照射方向と住宅群の向きが斜めになっている場合でも,良精度で住宅の識別を可能とした.2つめは,PolSARデータより得られるCoherency行列に,オリエンテーション角の補正を加えた後,固有値/固有ベクトル解析を実行することで得られる物理散乱メカニズム(固有ベクトル)を建築物群識別の指標として巧みに利用するアルゴリズムで,従来検出が非常に困難だった45度近く大きく傾いた住宅の検出率・識別率を大幅に向上できるようになった.これら成果は,最終年度に国際会議や学術雑誌で発表する予定である.さらに,変形・半壊した住宅の検出・識別に対応できるように,アルゴリズムの改良を試みている. 2.津波・洪水時の河川や海面の水位推定 昨年度から今年度にかけて実施した電波暗室での偏波散乱測定,および簡易的な偏波散乱シミュレーション解析により,水面に若干の波があっても,桁橋やトラス橋と水面との間の高さ推定が可能であることがわかった.しかし,レーダ照射方向に対して,橋が前後方向あるいは上下方向に斜めに傾いている場合は,高さ推定精度が大きく下がる,もそくは推定不可能になってしまう場合があることがわかったので,現在この問題の克服に取り組んでいる.また,屋外での水位測定実験を行うために,アンテナのポジショナの改良にも取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電波暗室内の偏波散乱測定と大容量メモリの計算機によるシミュレーションの併用により,PolSARデータを利用した被災住宅検出・識別のためのアルゴリズムの開発は順調に進んでいる.また,津波・洪水時の河川や海面の水位推定においては,アンテナポジショナの改良等により,(プール等での)実際の水面におけるモデル実験を行うための準備も進めている.
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今後の研究の推進方策 |
被災前後の住宅の識別精度を向上させるために提案したアルゴリズムについては,電波暗室内での偏波散乱測定を行い,変形した住宅モデルに対して適用することで全照射方向に対して有効かを検証する.さらに次世代のPolSARであるPi-SAR-L2(航空機搭載),Pi-SAR-X2(航空機搭載),ALOS2-PALSAR2(衛星搭載)で観測されたデータに対しても本アルゴリズムを適用し,高解像度データに対する妥当性を示す. 水位推定においては,波の高さと橋の角度を変化させた場合の偏波散乱特性を詳細に解析し,昨年度に構築した簡易水位推定アルゴリズムを改良していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ランダム粗面をもつ水面の解析に必要な大容量メモリ搭載した並列計算機の購入を予定していたが,偏波散乱測定用のアンテナポジショナが必要となり,ポジショナを優先して購入したため,高額な計算機の購入ができなかった.このため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
最近になりPC用メモリの1枚当たりの容量が増加し,比較的安価で販売されるようになったため,所有する旧型計算機の大容量メモリ化が実現可能となってきた.まずはこの大容量メモリ増設のために使用したい.また,研究成果発表の一部にも使用したいと考えている.
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