研究課題/領域番号 |
25350500
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
丹羽 正和 独立行政法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究員 (90421685)
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研究分担者 |
島田 耕史 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 敦賀本部 FBR安全技術センター, 研究員 (10446403)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 石英 / 水和 / 断層 / 年代測定 / 地質学 |
研究概要 |
本研究は,断層破砕帯で破壊された微小な石英破断面の水和層厚さから,断層の最新活動時期が推定できるかどうかを検討するのが目的である。平成25年度はまず,断層破砕帯のうち,最も細粒に破砕されたゾーンである断層ガウジから採取した石英粒子を観察し,形態等の整理を行った。 具体的には,上載地層により活動時期が明らかになっている活断層で,均質な花崗岩中に破砕帯が発達する福井県の白木‐丹生断層等の露頭から断層ガウジの試料を採取し,偏光顕微鏡観察,粒度分析,走査型および透過型電子顕微鏡観察を行った。一方,周辺の母岩に発達する熱水変質起源の粘土脈(活断層と異なり,繰り返しの変位が露頭で観察されないもの)からも試料を採取し,同様の観察・分析を行った。その結果,断層ガウジと粘土脈とでは,粒度分布や石英粒子の形態に大きな違いが認められた。しかしながら,これらの試料では,石英だけでなく熱水変質に伴い形成された粘土鉱物が混在し,石英よりも細粒で軟らかい粘土鉱物の方が摩耗・浸食の影響を受けやすい。そのため,石英水和層の厚さと関係する石英粒子の摩耗・浸食の程度が,最新の断層活動からの経過時間に加え,粘土鉱物の量比の影響をかなり大きく受けている可能性があることが分かった。一方,粘土鉱物の形態についても,断層ガウジと粘土脈とでは大きな違いが認められた。粒度分布や石英粒子の形態に加え,粘土鉱物の形態を比較することにより,断層の繰り返しの活動性の評価に適用できる可能性がある。 また,平成26年度以降の研究で,断層活動に伴う水‐岩石反応の痕跡の特徴(酸化還元環境や含水状態など)と,石英の水和反応との相関を検討するため,破砕帯岩石の粘土鉱物の粉末X線回折分析や全岩化学組成分析等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度中に,断層の最新活動時期を検討するのに適切な手法で,水和層の厚さの測定を行う石英を選定するのが当初の目標であったが,断層の最新活動時期を記録していると思われる断層ガウジについては,石英と共存する粘土鉱物の量比の影響を考慮する必要がある。そのため,さらに広範囲かつ,様々なタイプの断層面に対し,石英粒子の形態を観察・分類するとともに,粘土鉱物の種類や量比,形態についても,さらに広範囲かつ詳細に明らかにしていくこととした。水和層の厚さを測定する石英を選定する時期が遅れる分,研究の達成状況は遅めと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
石英水和層の厚さ測定に関しては,ほぼ石英のみからなる岩石であるチャート中の断層の平滑なすべり面(いわゆる,鏡肌)を対象に,断面の観察を行い,水和層の厚さの測定手法について検討する。鏡肌については,近年,原子間力顕微鏡での観察や剪断変形実験等の結果に基づき,地震性すべりとの関係が指摘されており,これらの水和層の厚さの測定は,断層の活動時期の推定にも資すると考えられる。 また,試料の調整方法の確認や,石英水和層の厚さと年代との関係を把握するため,黒曜石やテフラ中の火山ガラス等を対象に水和層厚さについて検討する。 一方,粘土鉱物に富む断層ガウジについては,平成25年度の研究からは,粘土鉱物の形態が断層の繰り返しの活動性と相関がある可能性があることが分かってきた。そのため,石英粒子の観察・分類に加え,粘土鉱物の透過型電子顕微鏡による観察や粉末X線回折分析等を行い,石英粒子と粘土鉱物との形態変化の比較,および断層活動時期や繰り返しの活動性との比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
水和層の厚さを測定する石英の選定が遅れた分,当初実施予定であった酸素・水素同位体比分析が実施できなかったのに加え,全岩化学組成分析等の分析数量も当初計画よりも少なくなったので,平成25年度については,使用額が予定額を下回った。 平成26年度は,これらの各種分析に加え,石英水和層の厚さ測定のための試料調整,断層破砕帯内物質(特に,粘土鉱物)の透過型電子顕微鏡観察等を行うため,平成25年度からの繰越分は,これらを実施するための消耗品等に充当される予定である。
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