研究課題/領域番号 |
25350500
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
丹羽 正和 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 副主任研究員 (90421685)
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研究分担者 |
島田 耕史 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉研究開発部門 もんじゅ運営計画・研究開発センター, 技術副主幹 (10446403)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 石英 / 水和 / 断層 / 活動性 / 地質学 |
研究実績の概要 |
本研究は,断層破砕帯で破壊された微小な石英破断面の水和層厚さから,断層の最新活動時期が推定できるかどうかを検討するのが目的である。 平成27年度は,石英粒子表面の腐食の程度をより定量的に把握するため,様々な断層から採取した石英粒子に対し,表面構造の電子顕微鏡による観察および電子スピン共鳴信号の測定を行い,両者の関係について検討を行った。電子スピン共鳴信号の測定の結果,石英中の不純物に由来する信号は母岩と断層とで明瞭な変化傾向が見られなかったが,共有結合の欠陥に由来する信号については,断層ガウジにおいて母岩よりも強度が大幅に増大するケースが見られた。特に,マイクロ波出力を上げて測定した時に検出されるR信号(Hataya et al., 1997, Appl. Radiat. Isot.)に着目すると,活断層よりも非活断層のガウジ試料の方が母岩との信号強度差がやや大きい傾向が示唆された。この信号は,試料をフッ化水素酸でエッチングすることにより,断層ガウジでの信号強度が低下して母岩と同程度になることも示された。電子顕微鏡観察からは,フッ化水素酸処理により微小割れ目などの弱面に沿って腐食が進んでいることが明瞭に確認された。したがって,R信号は主に石英粒子表面の破砕に伴う傷を受容体とするもので,この信号の測定により,活断層による最近の破砕からの経過時間が推定できる可能性がある。 また,断層活動に伴う鉱物・化学変化と石英の水和反応との相関を知るため,破砕鉱物の元素マッピングを精度よく実現するための測定条件,および不均質な断層ガウジのX線回折分析による鉱物組成の半定量手法を整備した。 なお,平成26年度までに実施した,石英粒子の表面構造を断層の性状ごとに統計的に区分した結果や,火山ガラスにおける水和層厚さと屈折率,化学組成との関係を取りまとめた結果ついては,査読付き論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
石英粒子表面の腐食の程度と電子スピン共鳴信号や化学組成(元素分布)との関係については,活断層かそうでないかを判定するための基準として整備するには,更なる観察・分析事例の蓄積が必要である。また,変形試験などの実験結果との比較データも追加されることが望ましい。そのため,来年度(平成28年度)まで1年間,本研究を延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに検討した手法に基づき,断層破砕帯や周辺母岩の石英粒子を対象に,表面構造の電子顕微鏡による観察,電子スピン共鳴信号の測定,元素マッピング,カソードルミネッセンス像の解析などを引き続き行うことによりデータを蓄積し,各要素と石英粒子表面の腐食(水和)の程度との相関関係,および活断層と非活断層との違い(識別基準)について取りまとめ,成果の公表を行う。また,本研究を今後さらに展開・深化させる上で必要な,石英破断面のナノスケールでの水和層厚さを定量的に把握するために最適な分析手法について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画に比べ,想定以上に断層中の石英粒子の構造が複雑且つ不均質と判明し,水和層の測定手法の再検討を行ったこと,試料調整や化学組成分析量が計画を下回ったこと,および機関内別業務が多忙を極めたことにより,当初計画通りに研究を遂行でなかったため,次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,天然の試料で観察・分析した結果と比較するための変形試験などに用いる消耗品の購入費,研究の取りまとめの際の論文投稿料・別刷料,学会発表に係る参加費,および学会参加や専門家との打合せなどの旅費として使用する。
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