研究課題/領域番号 |
25350502
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
後藤 文彦 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10261596)
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研究分担者 |
佐々木 貴信 秋田県立大学, 付置研究所, 教授 (00279514)
渡辺 千明 秋田県立大学, 付置研究所, 准教授 (50363742)
堀江 保 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70113397)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プレストレス木箱桁橋 / 継手接合 / 豪雪地帯 / 雪荷重 / トルクレンチ / 現地ヒアリング / ファコップ |
研究概要 |
これまで一定の施工性・強度性能を確認しているプレストレス木箱桁タイプの応急橋の鋼板部に継手を設けることで、更に応急橋キットとしての施工性の向上を目指した改良タイプの開発を行った。その研究成果が採用され、秋田県自然保護課の発注で太平山の登山道に歩道橋として架設された。豪雪地帯であるため、積雪3mで1平方メートル当たり10.5kNという大きな設計荷重で設計した。雪解け後に特に損傷は認められず、豪雪地帯での使用にも耐えることを確認した。 今回の改良タイプは、山間部への搬入を考慮して部材重量を軽くするため、鋼板部の三角孔が、従来タイプよりもやや大きくなっているが、こうした三角孔の拡張が、曲げ剛性にはほとんど影響しないものの、せん断剛性には有意な影響を与え得ることを有限要素法により確認した。 また、山間部等でのプレストレス緊張作業を簡易化するために、油圧ジャッキを用いずにトルクレンチを用いて緊張力を導入する方法を検討するための実験も行った。その結果、レンチによるトルクは、摩擦力だけではなく、PC鋼棒のねじれ変形やねじれ座屈変形にも消費されている可能性があり、トルクレンチによるトルク制御では、所定の軸力を導入できない可能性が示唆された。 平成24年に森吉の豪雪山間部に、部材搬入・施工性に特化した合板タイプの応急橋が架設されたが、このタイプ特有の形状変化や劣化度についても調査を行った。 以上のように、アップグレード型木製応急橋キットの性能向上に対して、新たな技術的・理論的な進展が得られた。実橋架設の可能性についても、山形県金山町,山形県鶴岡市あつみ温泉地区,岩手県大槌町にて現地ヒアリングを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、キット型応急橋の施工性能・適用範囲を拡張するため、鋼板部に継手を設けることで一部材の寸法を短くし、豪雪地帯の山間部等への架設も行えるような改良タイプを提案した。その研究成果が採用され、秋田県自然保護課の発注で太平山の登山道に歩道橋として架設されることになったため、積雪3mの雪荷重を想定して設計したモデルに対して載荷試験を行い、継手部の安全性を確認した上で、実際に秋田市太平山の豪雪地域の登山道に架設を行った。部材が小型化・軽量化したことで、山間部での搬入・施工性能は向上し、雪解け後も特に損傷がなく、今回の改良により、キット型応急橋の施工性能・適用範囲が大きく向上した。 軽量化のための鋼板部の三角孔とせん断剛性との関係、トルクレンチによるプレストレス緊張力導入の問題点など、今後の技術改良につながる新たな知見も得られた。 平成24年に森吉の豪雪山間部に、部材搬入・施工性に特化した合板タイプの応急橋が架設されたが、このタイプ特有の形状変化や劣化度についても調査を行ったところ、一冬で約200mm程度の沈下が認められたほか、ファコップによる応力波伝播速度試験では、1年間で若干の劣化が認められた。 実橋架設の可能性についても、地域材を活用したまちづくりを推進している山形県金山町、道を活用した地域づくりを推進している山形県鶴岡市あつみ温泉地区、復興まちづくりに地域材を使用しようとしている岩手県大槌町にて現地ヒアリングを実施し、金山町では好感触を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
アップグレード型の応急橋として、合板や角材等の軽量な部材だけで組み立てられるタイプから、鋼板を用いて車道橋として利用できるタイプ、鋼板に継手を設けて、山間部等へも部材の搬入を容易にしたタイプ、更にその目的に特化してトラス部材を用いたタイプ等、既に各種のタイプが実橋架設により施工性や耐久性については、実用性を確認しているが、劣化が進行した場合や現地での要求性能が変わった場合など、簡単に部材を交換したり、性能が高いタイプにアップグレードできるかという部分については、まだ十分に実用性が確認できていない。 そこで、既に架設されているアップグレード型の応急橋の経過観察を行い、剛性の低下や部材の劣化状況を把握し、部材交換やアップグレードの容易性・実用性についても、技術的な改良を行っていくとともに、模型試験体を用いて恒温恒湿室でのプレストレス変化量についての調査等も行う。 また、実橋架設の可能性について、現地ヒアリングで好感触を得た自治体を中心に、ヒアリングや調査を継続していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年8月開催の国際会議(WCTE2014)の参加費を平成25年度予算で支払う予定で残してあったが、参加登録の受付時期が3月中旬にずれ込み、平成25年度予算での支払いができなくなったため。 平成26年8月開催の国際会議(WCTE2014)の参加費または旅費の一部として使用する。
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