津波リスクについて防御レベル、避難レベルから最悪シナリオレベルまでを含む、高頻度の津波から低頻度の巨大津波までを含む確率的津波浸水域の算定方法を確立した.具体的には、過去の地震動から求めるグーテンリヒター則を活用する方法、過去の津波記録を基にした極地統計解析手法から求める方法、専門家の判断を活用したロジックツリー手法から求める方法からなる3つの手法を用いて、信頼ある確率的な浸水想定域を算定する方法を提示した.さらに、これらをもとに堤防、地盤かさ上げ、2線堤や緑の防潮堤の対策による浸水域低減の費用便益評価も実施した.耐用年数を半永久とした地盤かさ上げは、耐用年数のある堤防よりも有効な対策となる地点があること、しかし費用便益における適切な嵩上げ高さには上限があり、それを超える津波に対しては避難行動を求める必要がることを示した.これらの対策はその地点は人口密度に依存するので、将来の人口変動を見極めることは重要となる.今世紀中に予想される海面上昇のスケールと比べ、確率津波の高さの不確実性の幅が同じ程度か大きくなる結果となったことから、不確実性を抑える方法が今後必要になるとも言えた. 高潮リスクについては、地域頻度解析手法を用いることで不確実性の幅を抑えることができることを確認はしたが,この方法の妥当性を示すことは今後の課題としてのこった. これらのことから,沿岸域のリスク低減の政策ツールとしての構成はできあがったが,実用するためには確率的浸水域の精度もしくは信頼性を向上させる必要がある点が課題として残った.
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