研究課題/領域番号 |
25350505
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 寛 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90243170)
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研究分担者 |
牛尾 知雄 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332961)
中村 佳敬 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70609817)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気象用レーダ / 大容量データ / 離散コサイン変換 / 離散ウェーブレット変換 / 圧縮センシング / レーダネットワーク / 降雨減衰補正手法 |
研究概要 |
気象災害に対する警戒情報を提供するレーダネットワークを用いた観測システムの開発に必須となるレーダネットワーク信号処理手法を開発し、本手法の有効性を評価することを目的とし、以下のように研究を実施した。 ○Ku帯広帯域レーダ(BBR)およびフェーズドアレイレーダ(PAR)の1分間の観測データの容量は各々約350 MB、約600 MBとなる。これら複数レーダのネットワーク化を図り各レーダでのデータ全てを転送して一元処理するために必要な圧縮センシングを用いた圧縮手法の開発を行った。まず、離散コサイン変換(DCT)および離散ウェーブレット変換(DWT)を用いた高スパース性を達成する変換手法を検討した。PARのデータに対しては高圧縮率になる程、DWTが適していることを示した。次に、圧縮手法をPARの4例のデータへ適用した。圧縮率30%、40%、50%において平均復元率が約80%、約85%、約90%となり、30%の圧縮でも元のデータを80%の精度で復元できることを示した(学会発表2件)。 ○1台のBBRに対する従来のHitchfeld-Borden法では降雨状況により降雨減衰補正のための補正係数の値が不安定となる。本研究ではレーダネットワーク状況下におけるレーダ反射因子Zおよびその補正係数の値を最尤推定する新たな手法を提案した。本手法を20km離れたBBR2台の対向区間における降雨減衰補正の1次元シミュレーションに適用した。PARの観測データを元に作成した真値との誤差の平均値は0.5dB程度に収まり、レーダの観測値自体の誤差が数dBあることから、本手法が実用上十分な精度で適用可能なことを示した(学会発表1件)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧縮センシングを用いた圧縮手法をPARで観測された実際の大容量観測データに適用した結果、効果的な圧縮が可能であることを示した。また、レーダネットワーク状況下における降雨減衰補正手法のシミュレーション結果から、その効果も示した。以上のことから、研究目的が平成25年度の研究計画に沿って、おおむね達成できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
○開発した圧縮手法をBBRの観測データに対して適用し、高スパース性を達成する変換手法として、DCT とDWTのどの変換が適しているのかを検討する。その後、実際のBBRの観測データに適用し、圧縮率・復元率について検討する。得られた結果を取りまとめ、学会にて発表し、学会誌へ投稿する。 ○開発したZおよびその補正係数の値を最尤推定する手法を重複する観測範囲に適用可能な2次元シミュレーションが行えるように手法の改良を行い、改良前後の結果の比較検討を行う。得られた結果を学会にて発表する。また、ドップラー速度折り返し手法および2・3次元風速の算出について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた計算機の価格がかなり下落したことと既存のモニターの有効利用を図ったため、25年度の研究費に未使用額が生じた。 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したが計算機の価格が下落したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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