本研究は,GPSを用いた地盤変位計測システムのリアルタイム性を強化することによって,豪雨時・地震時における地盤災害を迅速かつ安全に監視することが可能な現場計測手法を確立することを目指す.申請者はmm精度で地盤の3次元変位を自動連続計測可能なシステムを開発しており,本研究ではさらにキネマティック方式を導入して,計測の時間分解能を向上させる受信機とデータ処理方法を開発し,低価格のセンサー開発の可能性も探る. 平成25,26年度では,新しい受信機を試作して受信機の基本的な性能を調査し,30秒周期のキネマティック計測により高精度に変位を計測できることを示した.また,低価格のヘリカルアンテナを簡易なグランドプレーンを装着することで,高価なフラットアンテナを用いた場合と同等の結果を得,低価格センサー開発の可能性が示された. さらに,1時間間隔のスタティック計測とほぼ同精度の計測が10分連続キネマティック結果を平均することで実現できる可能性を明らかにした. 平成27年度では,最終的な性能調査のため,実用的な300m程度の中規模基線長に対する計測,1秒間隔のキネマティック計測,強制変位実験による変位のリアルタイム検出を行った.中基線長においても数10mの短基線長と同等の精度で,1秒キネマティックでも30秒キネマティックと同等の精度で計測できることが示された.さらに,キネマティック解析結果を得るごとに約10分遡り計測結果を平均すれば,1秒ごとに1時間スタティックとほぼ同等の計測が可能となり,リアルタイム性の向上が示された.なお,これらは安価なヘリカルアンテナとグランドプレーンで構成される受信機でも実施された. 以上のように,新しい受信機とキネマティック方式を導入したデータ処理方法によって,計測の時間分解能を向上させることができ,加えて低価格の受信機開発の目途が示された.
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