研究課題/領域番号 |
25350514
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
林 修吾 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (20354441)
|
研究分担者 |
楠 研一 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 室長 (40354485)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 雷観測 / 偏波レーダ情報 / 積乱雲 / シビアストーム / 雷災害 |
研究概要 |
本年度は,雷放電観測装置のアップグレードおよび偏波レーダデータ処理プログラム作成を行った上で,2013年8月21日に東京都西部で発生した積乱雲を対象に事例解析を行った. 具体的には,2013年5~7月にかけて東京都西部(調布および小金井)に設置した雷放電三次元観測装置の観測精度および品質向上のための改修作業を行い,ノイズレベルの低下およびデータ取得数の増加を確認した.国交省MPレーダの偏波情報については,データフォーマットの変換および品質管理を追加導入し,本研究での利用に向けた利用環境整備を行った. 以上を踏まえて,改修後の2013年8月21日に東京都西部で発生した激しい雷雨を伴う積乱雲を対象として,雷放電点三次元観測データおよび国交省MPレーダによる偏波レーダデータを用いて,雷放電開始時の放電点付近の偏波情報を取得し,雷放電発生時から最盛期までの雷活動に伴う偏波情報の解析を行った.その結果,雷放電開始点付近の偏波情報によると,上層から開始する雷放電は霰と氷晶の領域から開始し,下層から開始する雷放電は扁平な粒子の領域から開始するという異なる特徴が明らかとなった.さらにデュアルドップラー解析による上昇流分布解析から,雷放電の開始数十分前から凍結高度付近に強い上昇流体積の増加が見られ,偏波情報から得られた霰体積の増加および雷活動の変化と強い対応が見られた.また三次元的に雷放電開始点とその偏波パラメータを明らかにすることで,霰と氷晶の境界,霰と雨滴の境界,といった領域に放電開始点が位置することが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雷三次元標定装置の改修および偏波レーダ利用環境の整備を行った.これにより,観測精度およびデータ品質が向上した. 2013年8月21日に東京都西部で発生した積乱雲を対象に事例解析を行い,観測された雷放電点と偏波パラメータおよび上昇流を解析し,雷放電が開始する領域の特徴を調査した.その結果,霰領域およびその境界での雷放電開始が多く見られることを明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
2014年夏を対象に引き続き観測を行い,雷放電データおよび偏波パラメータ情報の蓄積に努める. 2013年夏の観測データおよび新たに得られた2014年夏の観測データを用いて,雷雲内の雲粒子分布構造および電気的構造の解析を進め,雷放電を発生させる雲微物理的環境を明らかにする.これらの内容を国際学会等で発表し,論文等にまとめる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
国際学会での発表のために旅費を計上していたが,本研究テーマに適した発表の機会がなかったため,本年度は参加を見送った. これまでに得られた成果を国際学会や国内学会で発表するため,大会参加費や旅費に利用する.また観測データおよび解析結果の保存のためのHDD等の購入に充てる.
|