研究課題/領域番号 |
25350515
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
森 修一 独立行政法人海洋研究開発機構, 大気海洋相互作用研究分野, 分野長代理 (00344309)
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研究分担者 |
山中 大学 独立行政法人海洋研究開発機構, 大気海洋相互作用研究分野, 上席研究員 (30183982)
服部 美紀 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 技術研究員 (50533519)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インドネシア海大陸気候 / メソ気象学 / レーダー気象学 / 熱帯気象学 / 雷雨 / ビデオゾンデ / 二重偏波レーダー |
研究実績の概要 |
メソスケール気象学および降水システム気候学の両視点から,衛星観測ならびに地上レーダー観測に基づき,インドネシア海大陸域の中でも雷雨による社会的影響の大きいジャカルタにおける雷雨活動を主対象として,課題1:衛星および現業地上観測データによる雷雨気候の統計解析,課題2:ジャカルタ雷放電観測網の整備と雷観測データセット構築,課題3:複合レーダー特別観測によるジャカルタ雷雨のメソスケール理解,を目的とした研究を展開中である. 研究3年計画の第2(2014)年度として,課題1では初年度に引き続きインドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)現業地上観測(SYNOP)および衛星降水データ(GSMaP)を用い,ジャカルタを含むジャワ島北西部における雷発生環境について,特にENSOに伴う雷観測頻度の日変化と季節変化,およびそれらの地理的差異について検討した. また,課題2における雷放電観測網は,ジャカルタを囲む3地点にVLF受信機を展開し,連続観測およびデータ取得体制が構築された. これらを基に,課題3として当初計画通り2015年2月05-18日にジャカルタ雷雨を対象とした集中観測を実施した.本集中観測では,可搬型Xバンド二重偏波レーダーをジャカルタ南部に位置するボゴール市内に設置した上で,ボゴール山麓域にあるBMKG Citeko観測所に雨量計や雨滴計など多種類の地上観測装置を展開すると共に,4回/日の高層ゾンデ観測,ならびに計4回の雲粒子ビデオゾンデ(HYVIS)観測を実施した.特別観測期間中の2月08-09日にはジャカルタ域に激しい雷雨が継続し,10日にはジャカルタ都心部全域に渡り大規模洪水が発生し,交通機関など社会インフラが麻痺する程の被害が発生するなど,同地域雨季における降水の特徴が良く示されていた.現在はインドネシア人研究協力者と共に取得データの整理,品質管理作業等を実施中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1 初年度に引き続き,ジャカルタ周辺域における雷雨気候の統計解析は順調に進んでいる.一方,下記の集中観測の準備および実施に伴い,今年度実施予定であった衛星観測(TRMM LIS)雷データセットを用いた解析が滞っている.また,長期観測データ保存地点が当初計画より大幅に限られていたため,グリッドデータ化には至っていない.一方,全ての雷雨気候統計データはインドネシア側へ提供され,関連官公庁へ情報提供が行われている. 課題2 VLF帯雷放電観測網がジャカルタを囲む3地点(ジャワ島スルポン,パムンペック,およびスマトラ島コトタバン)に構築され,連続観測およびデータ取得が開始された.しかしながら,このうちパムンペック局については現地電源の問題から設置後1ヶ月の間に受信機アンプが焼損し,データ取得が不可能となった.このため,AVON (アジア広域VLF雷放電観測網)の1つとして稼働中のカリマンタン島ポンティアナ局受信データが代替利用されているものの,これらを統合したデータ解析および雷データセット構築は未了である.このため,下記集中観測期間について,全球雷データセット(商用)であるVaisala GLD360が追加取得されている. 課題3 当初計画通り2015年2月にジャカルタ雷雨に対する集中観測を実施し,可搬型Xバンド二重偏波レーダー(XDPR)等を用いた良質の観測データを得ることができた.しかしながら,これまで連続観測を行ってきたCバンドドップラーレーダー(CDR)およびウインドプロファイラ(WPR)が集中観測直前に故障し,結果として「複合」レーダー観測データを得ることができなくなった.また,唯一のレーダーであるXDPRについても,期間途中から急激に背景ノイズレベルが上昇し,およそ0.5mm/h以下の弱い降水を把握することができなくなった(いずれも落雷の影響によるものと推定されている).
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今後の研究の推進方策 |
課題1については,取りまとめが遅れているジャカルタ首都圏に対する現業地上観測(SYNOP)雷雨/雷光/雷鳴,TRMM LIS雷光,およびGSMaP降水データを統合した雷雨気候(雷雨発生位置,時空間密度,降水強度等)の解析を急ぐと共に,これをインドネシア全土へ地域拡大する.また,これら雷雨特性に関してENSO/IODや赤道越えモンスーン北風サージ,MJOなど大規模擾乱と雷特性の相互関係について取りまとめる. また課題2および3としては,今(2014)年度実施したジャカルタ雷雨集中観測結果について,先ずデータ品質管理等に時間を要して遅れている解析作業を急ぐ.特に,集中観測期間中の2月08-09日にはジャカルタ域に激しい雷雨が継続し,10日には都心部全域に渡り大規模洪水が発生し,交通機関など社会インフラが麻痺する程の被害が発生した.したがって,当該事例を対象として雷生成の鍵となる積乱雲内における霰や氷晶など固体降水粒子の時空間分布とその動態に注目した事例解析を優先し,ジャカルタ都市機能に対する社会的影響度の大きな都市雷雨の構造と動態,そのライフサイクル(発生,発達,消滅,および移動)を明らかにし,豪雨形成過程の理解進展を図る. なお,前記のように残念ながらCDRおよびWPRの観測データを得ることができなかったため,「複合」レーダー観測については当初計画を変更せざるを得ないが,例えばCDR観測が担っていたジャカルタ広域降水観測については,時間分解能1時間となったGSMaP衛星観測データを代用する等の方策により対処する.また,こちらも前記のように解析が遅れているVLF雷観測データに代えて,集中観測期間に限定した全球雷データセットGLD360の解析を優先し,全体計画を完成させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の1人が育児休業を取得したため,当初計画申請段階において当該研究分担者へ配分予定であった消耗品費,旅費等に対応する金額を全て使用するには至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
研究に復帰した当該研究分担者の研究打合せ旅費,およびデータ解析用の計算機消耗品費の一部として使用予定である.
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