加齢による記憶能力低下のメカニズムを探るため、記憶中に脳から出る微弱な磁場(脳磁場)を計測し、20歳代前半の若年者群と60歳代の高齢者群で比較した。記憶対象を順番に視覚呈示すると、若年者群ではα帯域(8-13 Hz)の脳律動が記憶中に増加していくのに対し、高齢者群では逆に減少することがわかった。脳磁場分布から脳内の活動部位を逆算すると、若年者で見られたα波律動の増大は、記憶に関係のない視覚入力の抑制により生じているらしいことが分かった。以上の結果は、記憶に関係のない視覚入力の抑制が働きにくくなることが加齢による記憶能力低下の一因となることを示唆した。
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