研究課題/領域番号 |
25350522
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石黒 亮 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (70373264)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | RNA / アプタマー / FGF2 / 核酸医薬 |
研究概要 |
本研究ではFGF2タンパク質を特異的に認識するRNAアプタマーを開発し、FGF2が関節リウマチの病態形成や病態の維持にどのように影響しているかを生体内で詳細に解析することを目的としている。FGF2の過剰発現により、滑膜細胞から産生される破骨細胞形成抑制因子(OPG/ OCIF)が抑制される一方、骨芽細胞からのRANKLの発現が促進され、破骨細胞への分化が促進されることが示唆されている。これらの作用が関節リウマチの発症に関わっているなら、抗FGF2アプタマーをマウスモデルの発症前に投与することで、リウマチの発症を阻害するはずである。申請者はマウスGPI誘導関節炎モデルを用いアプタマーの投与試験を行った結果、関節リウマチの発症を強く抑制することが解った。 しかしアプタマーは核酸を素材とするため、ヌクレアーゼにより体内で分解が起こっていることが予想される。実際天然のRNAはリボースの2’位が水酸基であるため、RNA分解酵素によって極めて短時間に分解され消失する。この分解を防ぐ為に、初年度はリボースの2’位をフッ素(F)化、デオキシ(H)化、メチル(OMet)化することを試みた。改変によりFGF2への結合を失うことが無い様、相互作用試験で確認しながら改変を進めた結果、血中の安定性が高い変異体を多数得ることに成功した。さらに、生細胞を用いたシグナル阻害試験でも、作製した改変アプタマーは強いFGF2阻害効果を示した。今後さらに改変を進め、より薬効の高い、副作用の少ないアプタマーを目指し創り込んで行きたい。また、改変した候補をマウスGPI誘導関節炎モデルを用いて検証する準備も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
関節リウマチの発症機序におけるFGF2の機能解析が遅れている一因として、特異的な解析ツールが存在しなかったことが挙げられる。本研究が標的とするFGF2は動物種を越えてタンパク質配列の保存性が極めて高く有効な特異的中和抗体の作製を阻む要因となっている。これに対し、アプタマーはSELEX法を用いて人工的に作成されるので、抗原性の低い標的分子や抗原として精製が困難な標的分子に対しても作製が可能である。実際作製したアプタマーが動物モデルで有効性を示したのは大きな進歩であった。 また、当初核酸であるRNAアプタマーの血中安定性を得ることは容易ではないと予想していたが、近年様々な塩基修飾の技術開発が進んでおり、多彩な候補を試すことができたことが大きな要因である。より毒性の低い、低価格の核酸医薬開発にも繋がると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoにおけるアプタマーの試験はGPI誘導関節炎モデル及びCIA(Collagen-Induced Arthritis)モデルを用いて行う。GPI誘導関節炎モデルは既に確立しており、関節炎の発症及び病徴を非投与群と比較する。アプタマーの改変でより血清中安定性の高かった候補品の投与を行い、より薬効の高い候補の絞り込みを行う。またその際、投与量や投与間隔、投与方法についても検討を行う。アプタマーはその作用機序が抗体医薬と近いが、抗体には無い特徴が副作用を抑える要因として役立っている。特に、免疫排除を受け難い点や極めて高い結合特異性、アンチセンス核酸での不活化はアプタマー特有の利点である。本研究は関節リウマチにおけるFGF2の病態形成への関与を明らかにし、安全性の高い新規治療薬開発を進めることが十分期待できる。
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