研究課題
本研究は,人体の皮下組織の構造・形態を模倣し,皮下組織の応力状態を評価できる人体腰部ダミーモデルの開発を目的とした.平成25年度の研究では,米国立医学図書館の人体解剖データベースに含まれる男性の腰部断面画像に基づき生体に忠実な筋肉層と脂肪層を有する腰部ダミーモデルを作成した.この研究で培った製作技術を用いて,平成26年度の研究では,腰部有限要素モデルと同じ形状・形態が腰部ダミーモデルにおいて実現するよう改良を行った.腰部有限要素モデルは人体全身有限要素モデルTHUMS(トヨタテクニカルディベロップメント社製,AM50 pedestrian V1.4,2006)から腰部のみを抽出し独自の改良を加えたもので,成人男性の仰臥位での圧力分布と比較して妥当性を確認した.この腰部有限要素モデルのデータから,3Dプリンターを利用して骨盤と大腿骨モデルを作成し,これを腰部原型の鋳型に固定してシリコンゴムを流し込んで腰部ダミーモデルを作成した.平成27年度は,これまでに開発した解析用の腰部有限要素モデルと実験用の腰部ダミーモデルに同じ負荷条件を与えて,床面との接触圧力を比較し,その定量的な有効性を評価した.仰臥位を想定した解析では臀筋下に高い圧力分布が見られ,その最大値の実験との誤差は0.4%で,良い一致が見られた.一方,側臥位で大転子下に生じる最大圧力を比較したところ,解析と実験の誤差は約40%と大きな違いがあったが,有限要素モデルの大転子下の軟組織形状を修正した結果,両者の誤差は約11%まで改善した.姿勢により傾向が幾分異なるものの,力学的にほぼ同じ特性を持つ腰部の有限要素モデルと実験用ダミーモデルを得ることができた.両者を用い,ダミーモデルの実験で得られた姿勢や接触圧力を有限要素モデルに入力し解析することで,実験で得ることが困難な軟組織内部の応力状態を求めることができる.
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Journal of Tissue Viability
巻: 25(2) ページ: 135-142
10.1016/j.jtv.2015.12.001