研究課題
前年度、CNTの取り込みが細胞やサイズによって全く異なることを報告した。そこで、最終年度としてCNTの取り込みと細胞種、及びCNTサイズとの関係をさらに検討した。CNTのバイオマテリアルとしての開発の関連から、まず、骨芽細胞での取り込みを検討した。骨芽細胞での取り込みではこれまで同様、分散剤による細胞増殖への違いがあった。特にゼラチン分散による細胞毒性が見られ、これが細胞取り込みによるものと思われたが、分散しきれていないCNT凝集塊にテストプレートから細胞が移動して接着し、増殖試験試薬投与前の培地のアスピレーションによって生きた状態で除去されている事が明らかになった。これはCNTサイズとも関連した結果であることから、我々はこれまでと異なるより高度にCNTを分散させるために高出力水槽式超音波分散機によるCNTの分散を試みた。その結果、これまで用いていた超音波分散装置でのCNTの粒子サイズが3~5μmを示していたのに対し、100~200 nmとなった。この時のマクロファージ様細胞での取り込みを比較したところ、CNT粒子径が大きなCNTではCNTの取り込みが分散剤に関わらず、高分散CNTと比較し、有意に取り込み量が多かった。さらに界面活性剤であるポリソルベートで分散した高分散CNTでは細胞内にCNTがほとんど取り込まれていない結果であった。これらの結果は少なくとも1次元にナノサイズがあるCNTがナノサイズとして存在する単独粒子、あるいはナノスケールでの凝集のままであると細胞のレセプターはCNTを認識しなくなる事を示している。言い換えると一次粒子でナノ粒子が存在できるのであれば、細胞に認識されることは難しく、ナノ粒子の特性である二次粒子を形成し、サブミクロンサイズになるとエンドサイトーシスに作用するレセプターに認識され、細胞内に取り込まれるものと考えられる。
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Int J Mol Sci.
巻: 16 ページ: 40-48
10.3390/ijms16010040