研究課題/領域番号 |
25350526
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川浦 稚代 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60324422)
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研究分担者 |
池田 充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184437)
今井 國治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20335053)
藤井 啓輔 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40469937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線計測学 / CT / 人体ファントム / 乳幼児 / 医療被ばく |
研究概要 |
当研究課題の目的は、日本人の乳幼児の人体構造を精密に模した人体ファントムの作製を行い、その内部に微小線量計を複数設置した臓器線量計測システムを新たに構築することである。作製した臓器線量計測システムを用いれば、現在、医療被ばくで最も問題視されている乳幼児のCT被ばくの実態を短期間に調査することが可能となる。 現在までに我々は、乳幼児患者のCT画像から0歳、0.5歳、1歳、3歳の骨格、体格を測定し、3歳児の人体ファントムの設計を行い、3歳児の頭頸部ファントムの作製を完了している。平成25年度の達成目標は、3歳児の体幹部ファントムを作製することであった。 ファントム材料には、作製費用と入手のしやすさ、加工のしやすさから、生体軟組織等価材にアクリル樹脂、骨等価材に石膏、肺等価材にタフラング260を使用した。設計当初、肋骨部分は人体と同様に、人体背面から前面にかけて傾斜をつけて配置する予定であったが、機械加工でアクリル樹脂を斜めに削ることが非常に難しいことが判明し、肋骨の形状を若干変更した。頭頸部ファントムと同様に、体幹部ファントムも2.5cmのスライス厚に分割し、各スライスには、蛍光ガラス線量計とSi-pinフォトダイオード線量計を設置するための穴あけと溝切り加工を施した。各線量計の設置位置は、International Commission on Radiological Protection(ICRP)のPublication 103において、実効線量評価に必要とされている組織・臓器位置を患者のCT画像と照らし合わせて、小児科医との相談の上決定し、線量計の設置個数は、線量計同士の干渉ができるだけ少なくなるように決定した。頭部から大腿部までの全身において、蛍光ガラス線量計は150箇所、Si-pinフォトダイオード線量計は32箇所設置できるように穴開け加工を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、日本人の3歳児の体型に即した、3歳児体幹部ファントムの作製を行うことを達成目標として研究を進めた。機械加工の都合で、肋骨の形状が若干変更になったが、当初の予定通り、3歳児の体幹部ファントムの作製を完了した。これに、平成22~24年度の科研費(代表者:川浦)で作製した3歳児頭頸部ファントムを結合し、3歳児人体ファントム(全身)を完成させることができた。ただし、このファントムには腕と脚はない。その理由は、骨格を計測するための患者のCT画像において、腕や脚を撮影したものがほとんどないからである。腕や脚の形状データが入手できれば、腕と脚の作製も考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に作製した体幹部ファントムに設置予定の微小線量計の作製を行う。本研究では、小型のSi-pinフォトダイオードを感度の方向依存性を少なくするために、裏面同士を貼り合わせ、二個の素子を並列に繋ぎ、一個の線量計として作製する。また、X線照射により各線量計素子で発生した電流信号は、照射時間中積分し、吸収線量に比例した電圧信号に変換した後、多チャンネルのA/D変換器で一度にパーソナルコンピュータに取り込むような線量読み取りシステムを作製する。コンピュータに取り込まれた電圧信号は、独自に作製する臓器線量・実効線量解析ソフトウエアで軟組織吸収線量に変換し、各臓器線量・実効線量をリアルタイムで表示可能とする。本研究では、これらフォトダイオード線量計、線量読み取りシステム、線量解析システムを一体化したものを臓器線量計測システムとして作製する。作製したフォトダイオード線量計は、標準電離箱線量計で校正を行った後、各線量計を作製した3歳児体幹部ファントムの主要臓器位置に設置し、すでに作製が完了している3歳児頭頸部ファントムシステムと結合させ、3歳児人体ファントム臓器線量計測システムを完成させる。
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