研究課題/領域番号 |
25350530
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中村 教泰 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10314858)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機シリカ粒子 / セラノスティック / 光線力学的治療 / 磁場温熱治療 / 診断と治療の一体化 / マルチモーダルイメージング / ナノ医療 |
研究概要 |
申請者が開発した有機シリカ粒子は多機能化能に優れており、マルチモーダルイメージングなどに応用可能な新規な多機能イメージングプローブの開発に成功している。本研究では有機シリカ粒子に薬理効果を付加し、診断と治療の一体化が可能なセラノスティック粒子の作製を目標とする。さらに一つの粒子に機序の異なる複数の薬理効果を付加し多戦略治療を可能とするマルチ・セラノスティック粒子へと発展させる。マルチモーダルイメージングと多種の薬理効果の発現が可能なマルチ・セラノスティック有機シリカナノ粒子の創製を行い、患者に優しい革新的治療や新規な研究技術の開発を目的とし研究をすすめた。 本年度は一つの薬理効果を持つモノ・セラノスティック粒子の開発を進めた。多機能有機シリカ粒子に対して光線力学的治療効果、磁場温熱治療効果、その他、有機シリカ粒子の分子構造を利用した応答性薬剤放出機構や金ナノ粒子による薬理効果の付加を検討した。光線力学的治療効果の付加にて光増感剤を内部や表面に結合させた多種の有機シリカ粒子を作製し検討を行った。その結果、570 nm, 620 nm, 710 nmの励起光、すなわち可視光から近赤外光までの広い波長域の励起光にて細胞障害を発揮し得る粒子の作製に成功した。また細胞障害において一細胞に対してリアルタイムで評価する方法も確立することができた。その結果、短時間の光照射で細胞死に至る細胞、また極めて低濃度の粒子においても細胞死に至る細胞が観察できた。光線力学的効果の強い粒子の作製に成功したと共に一細胞レベルの新しい評価法も確立することができた。磁場温熱治療効果の付加では、粒子の表層に磁性粒子を配置させるなど、新しい構造の粒子の開発に成功した。さらに光温熱治療効果などがある金ナノ粒子の粒子表面への結合を検討し、良好な成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多機能有機シリカ粒子に対して種々の薬理効果の付加を検討し、培養細胞に対して有意な細胞障害活性をもつ粒子の作製に成功した。光線力学的治療効果に関しては可視光線のみならず近赤外光線の励起にて細胞障害活性を認める粒子の作製にも成功した。近赤外光は体内への透過性が可視光よりも良好であるため生体内での応用に高い可能性を持つ。光線力学的治療において幅広い波長による治療学的検討が可能となった。さらに細胞障害活性の一細胞分析系の確立に成功した。一細胞分析により細胞毎の粒子結合量や生死の判別、細胞死に至るキネティクスなどの解析が可能となった。これらは当初の計画以上の付加的成果であり、今後の研究においても応用可能と考えられる。また磁場温熱治療効果など他の薬理効果の付加についても計画通りに進展している。光線力学的治療効果の付加的な成果を踏まえ当初の計画以上の進展とした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続きモノ・セラノスティック粒子の開発を継続して進める。また高い効果を示した粒子のマルチ・セラノスティック化を開始する。培養細胞と腫瘍移植マウスを用いて薬理効果の評価を進めると共にマルチ・セラノスティクスの高度化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画で困難が予想された光線力学的治療効果の付加に関して、有効な光増感剤の選定が早い段階で予想を上回る成果が得られたこと、さらにリアルタイムで細胞死の一細胞分析評価法を確立できたことにより、コストが節約できた事が挙げられる。 初年度に引き続きモノ・セラノスティック粒子の開発を継続して進めるが、有機シリカ粒子特有の分子構造を活用した薬理効果のユニークな付加技術に関して当初計画より幅広く検討し、薬理効果が高くかつ独創性の高い成果の獲得を目指し研究を進める。さらにマルチ・セラノスティック粒子の作製を予定より早期に積極的に展開する。またセラノスティック粒子の開発は世界的にも初期段階であるため、情報収集を幅広く行なう計画である。
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